工場では生産プロセスの過程でさまざまな廃水が出ます。
環境へ悪影響を及ぼす物質が含まれるケースも多く、排水するには適切な処理が必要です。
工場の排水処理を決めるためには、排水量や達成したい水質基準を把握したうえで、予算に応じた排水処理方法を考える必要があります。
本記事では工場排水について、処理方法や処理装置を網羅的に解説して、工場別の具体例を紹介していますので、スムーズに排水処理を検討したい方は必見です。
目次
工場の排水処理とは?
工場の排水処理とは、廃水に含まれる有害物質や汚れを取り除いて工場外へ排出することです。
工場の排水処理方法を決めるためには、まず以下3つの要素を把握しましょう。
- 排水量
- 水質基準
- 予算
例えば、排水量が少なければバッチ式の小型排水処理装置で事足りるかもしれませんし、逆に排水量が多いと、連続式の大型排水処理で自動薬注しなければ処理できない可能性もあります。
自社で行いたい排水処理ができるかどうかは、この3つの要素の組み合わせで決まるので、正確に把握することが大切です。
工場で排水処理が必要な理由
工場で排水処理が必要となる最大の理由は、環境汚染を防ぐためです。水質汚濁防止法では有害物質の排水基準を定めており、適合しない排水処理をしている事業所には罰則が課せられます。
例えば、河川へ排水する際の水素イオン濃度(pH)は5.8以上8.6以下と定められており、適合していない場合はpH調整した上で排水しなければなりません。
企業の社会的責任が問われる現代において、環境保護への取り組みに直結する排水処理は必要不可欠です。
工場排水の処理方法
工場排水の具体的な処理方法には、大きく分けて以下3つがあります。
- 物理処理
- 生物処理
- 凝集処理
それぞれの排水処理方法を掘り下げて確認していきましょう。
物理処理
物理処理は、ろ過、蒸発や乾燥、物質の比重差を利用しての分離など、物理的な方法で有害物質や汚れを取り除く排水処理方法です。
- 活性炭によるろ過
- RO膜やNF膜などの吸着
- 加熱や天日干しなどの水分乾燥
- 遠心分離による固液分離
物理処理には数多くの方法があり、処理したい物質により選択する処理方法が異なります。
排水処理の専門家に相談した上で、処理方法を決定するのがベターです。
生物処理
生物処理は、有機物や汚れを微生物によって分解・除去する排水処理方法です。
BODやCODが高い現場で活躍しています。
自然界に存在する微生物を活用するので、環境負荷が少ないことが生物処理の特徴です。
一方で、有機物や汚れを分解するのに時間がかかることや処理装置が大きくなることがデメリットだといえるでしょう。
凝集処理
凝集処理は、無機凝集剤や高分子凝集剤など薬品を使って、有害物質や汚れとキレイな水とを分ける排水処理方法で、一般的には以下の3工程となります。
- 無機凝集剤での凝結作用
- 苛性ソーダなどpH調整剤での中和処理
- 高分子凝集剤での凝集作用
処理したい物質により薬品が変わることが、凝集処理の特徴です。
選択する薬品によっては排水処理の時短になるケースもあるため、効率的な排水処理方法だといえるでしょう。
工場排水の処理装置
工場排水の処理装置を大きく分けると、連続式排水処理装置とバッチ式排水処理装置の2種類があります。
それぞれの装置の特徴を以下で確認していきましょう。
連続式排水処理装置
薬品を入れる水槽が2つ以上あるのが連続式排水処理装置で、主に1日の排水量が数十トン~数千トンにも及ぶ工場で使用されます。
連続式排水処理装置は、水槽に連続的に水が流入して、水の量に合わせて必要な薬品を自動で注入する仕組みです。
薬品や注入量などの条件を一度決めておけば、自動的に排水処理できます。
ただし、水質に変化があった際の調整が難しい点は、頭に入れておいた方がよいでしょう。
バッチ式排水処理装置
薬品を入れる水槽が1つなのがバッチ式排水処理装置で、主に1日の排水量が数トンまでの小規模排水の工場で使用されます。
バッチ式排水処理装置は、1つの水槽に水をためていき、そこに必要な薬品を毎回注入して処理する仕組みです。
毎回水質を確認できるため、濃度にムラがある排水の処理に適しています。ただし、薬品の注入量の調整や管理に手間がかかるのがデメリットです。
■商品詳細ページ:小型排水処理装置
工場別の排水処理
ここからは以下3つの工場での排水処理について確認します。
- 食品工場
- 半導体工場
- ガラス加工工場
排水処理は生産される製品によって異なります。
工場別の排水の特徴や処理方法について確認していきましょう。
食品工場の排水処理
食品工場では油分を多く使うため、ノルマルヘキサン抽出物質やBOD、CODが高くなることが特徴です。
排水処理の選択肢は、一般的に以下の2つがあります。
- 活性炭での物理処理の後に凝集処理
- 生物処理
BODやCODの値が10,000mg/L以下であれば、活性炭でろ過をしてから、凝集処理を行うことで、排水処理できる可能性があります。
ただし、SS(懸濁物質)由来のBODやCODであることが前提です。
SSが少ない、BODやCODの値が10,000mg/L以上の場合は、生物処理で排水処理を行うケースが多いです。
半導体工場の排水処理
半導体工場の廃水はフッ素を含むケースが多いのが特徴です。
フッ素を除去するために消石灰が使われることが多いですが、中には排水基準の8mg/リットルを下回らない事例もあります。
この場合、消石灰で1段階目、フッ素除去剤で2段階目の処理を行うことで排水基準をクリアできるかもしれません。
フッ素除去剤を使うことで消石灰の使用量が少なくなれば、汚泥の量が減るというメリットもあります。
ガラス加工工場の排水処理
ガラス加工工場では、廃水にガラス粉や研磨剤などの無機物が多く含まれます。
無機物なので生物処理はできませんが、一般的な凝集沈澱処理で対応できることがほとんどです。
排水量が多ければ連続式、少なければバッチ式で対応している工場もあり、複数の薬品を使用しているケースもあれば、粉末一剤型凝集剤を使っていることもあります。
選択肢が多いので、排水量と予算に合わせて検討するとよいでしょう。
工場排水別で適切な処理方法を選ぼう
排水処理方法は、種類が多く多彩な設備があるため、どれを選択したらよいかわからない人も多いと思います。
ネクストリーでは、お客様のご要望に合わせて、最適な排水処理方法や設備、薬品をトータルでご提案します。
工場での排水処理にお悩みの人は、ぜひ一度ネクストリーまでお問い合わせください。