PACは排水処理において一般的に広く使用されている凝集剤です。
しかし、「よく耳にするけれど正直どんな薬品かわからない」「塩化アルミニウムとは違うの?」など疑問に感じている方も多いでしょう。
本記事では凝集剤PACの特徴、メリットやデメリットについてわかりやすく解説しています。
PACについて詳しく知りたい方は必見です。
PACとは?
PAC(パック)は飲み水を作るために浄水場などで使われており、日本で一番幅広く使用されている凝集剤と言えます。
池や川の水は化学物質や汚れを含んでおり、そのままでは飲めません。浄水場で飲み水として供給できるようにさまざまな薬品で調整されており、PACはその1つです。
また、PACはポリ塩化アルミニウムとも呼ばれる液体の薬品で、pH値は約4の酸性の液体で、塩酸とアルミニウムの他に硫酸イオンが僅かに含まれていることが特徴です。
硫酸バンドと並んで有名な凝集剤であるPACについて概要を確認しましょう。
凝結作用のための薬品
水処理は大きく分けて「凝結」と「凝集」の2つの工程があり、PACは凝結作用のための薬品です。
PACを水中に投入すれば、水の中の浮遊物(汚れ)がアルミニウムとくっつくようになります。
浄水場での使用を例にすると、PACを投入することで水の中に含まれる細かい土や砂、プランクトンなどの汚れがくっつき、塊になっていくイメージです。
凝集処理の流れについては、以下の記事でわかりやすく解説していますので、合わせてご覧ください。
■関連記事:凝集剤ってなんだろう?凝集処理の流れと 無機凝集剤と高分子凝集剤の使い方
塩化アルミニウムとの違い
PAC(ポリ塩化アルミニウム)と同じ凝結作用を持つ薬品で塩化アルミニウムという薬品があります。
どちらも液体で同じ作用を持つ薬品ですが、この2つは全くの別物であり、以下の違いがあります。
PAC |
塩化アルミニウム |
|
成分構成 |
塩酸+アルミニウム+硫酸イオン |
塩酸+アルミニウム |
アルミ含有量 |
多い |
少ない |
pH |
約4 |
約2 |
どちらも酸性の薬品ですが、塩化アルミニウムはpH約2と強い酸性のため中和剤が多く必要であり、設備の腐食性が高いことが特徴です。
上の表からもわかるとおり、PACには硫酸イオンが含まれています。硫酸イオンは凝集性能や凝集範囲に好影響をもたらすため、PACの方が使いやすい凝集剤と言えます。
PACを使うメリット
硫酸バンドや塩化アルミニウムなど液体系の薬品と比較した際に、PACには以下のメリットがあります。
- pHが比較的高いから使いやすい(設備が腐食しにくい、中和剤が少なくて済む)
- 添加量が少なくて済む(硫酸バンドより20~50%削減できる)
- 汚泥が出にくく、産廃費用の削減に貢献する
コスト面では硫酸バンドや塩化アルミニウムの方が安価ですが、使用感や添加量からPACを選ぶ企業も多くあります。
PACを使うデメリット
幅広く使われているPACにも、以下のデメリットがあります。
- 酸性の薬品なので中和処理が必要
- 不具合が起こった時に調整が難しい(複数薬品があり、原因特定と調整が難しい)
PACでは凝結作用しか対応できず、水処理を完結させるためには中和剤や高分子凝集剤など他の薬品が必要です。
不具合が起こった時にどの薬品の量を調整すれば良くなるのか、判断が難しいことがデメリットです。
酸性の薬品であるPACは入れ続けると排水が酸性に傾いていきます。
河川に放流する際はpH5.8〜8.6にする必要があり、基準を守るためには管理が必須です。
PACを使った水処理
PACを使った大まかな水処理の流れは以下のとおりです。
- 汚れた水にPACを入れる(凝結)
- 苛性ソーダなどの中和剤を入れる(中和)
- 高分子凝集剤を入れる(凝集)
多くの場合PACだけでは水処理が完結しないため、複数の薬品が必要となります。
それぞれ適正添加量を守るのは勿論ですが、排水の濃度が変わった場合などの調整が非常に難しく、排水に異常が出た場合は、専門業者に相談が必要になる場合があります。
PACを使わない粉末一剤型凝集剤
水道水の処理にも使われているPACは日本で有名な凝集剤の1つです。
液体でpH約4と比較的高いため扱いやすいのが特徴ですが、高分子凝集剤など他の薬品とセットで使うのが基本であり、管理が大変です。
ネクストリーではPACを使わない水処理薬品として、粉末一剤型凝集剤「アクアネイチャー」を提案しています。
1つの薬品で凝結から凝集まで完結できるため、量の調節だけで簡単に使用することができる薬品です。
アクアネイチャーが気になる方は、お気軽にお問い合わせください。