「有機物を含んだ排水を処理したい!」とお考えではありませんか?
生物処理と呼ばれる微生物を活用する排水処理方法であれば、効率的に有機物を含んだ排水を処理できます。
本記事では代表的な4つの生物処理方法など網羅的に解説していますので、生物処理について知りたい方は必見です。
目的
生物処理とは?
排水処理の生物処理とは、水中で汚れの原因である有機物を微生物の力で分解する方法のことで、以下2種類の微生物を活用します。
- 好気性微生物⋯酸素が豊富な環境で生存・繁殖する微生物
- 嫌気性微生物⋯酸素がない〜少ない環境で生存・繁殖が出来る微生物
それぞれ異なる物質の処理に使用されているため、順番に解説していきます。
好気性微生物の活用
好気性微生物は空気(酸素)を好む微生物で、活動するエネルギーを得るために、水中に溶けている酸素を使って有機物を分解します。簡単に言い換えると、栄養分となる有機物を食べるということです。
好気性微生物は、排水の有機物を水や二酸化炭素、硝酸イオン、硫酸イオンなどの無機物に分解します。
ちなみに水中に溶けている酸素を専門用語で溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen)と呼ぶので覚えておきましょう。
嫌気性微生物の活用
嫌気性微生物は生きていくために空気(酸素)を必要としない微生物で、有機物に含まれる硝酸や亜硝酸、硫酸などを取り入れて、エネルギーに変換しています。
この活動により硝酸や亜硝酸が分解され、窒素ガスが発生します。この原理を利用したのが嫌気性微生物による生物処理であり、水中の窒素を低減させるのが役割です。
好気性微生物とは違い、嫌気性微生物には酸素を供給する必要がないため、省エネルギーで対応できるのが魅力といえます。
生物処理のメリットとデメリット
メリット | デメリット | |
好気性微生物 | ・有機物の分解速度が速い ・微生物の管理が比較的簡単 ・臭いが発生しにくい | ・曝気による酸素供給が必須でコストがかかる ・余剰汚泥の発生量が多い |
嫌気性微生物 | ・曝気の必要がないのでコストが安価 ・脱窒ができる ・余剰汚泥の発生が少ない ・バイオガスのエネルギー源を生成できる | ・有機物の処理速度が遅い ・臭いが発生しやすい |
上記は生物処理に使う微生物それぞれのメリットとデメリットをまとめたものです。どちらも環境に優しいというメリットがある一方で、気温や温度の変化に弱いというデメリットがあります。
好気性微生物と嫌気性微生物のどちらを選択するかは、処理したい排水の性質によって変わり、場合によっては両方を組み合わせることもあります。
例えば、排水中の窒素化合物(アンモニア)を除去したい場合は、好気性微生物によってアンモニアを硝酸に酸化させた後、嫌気性微生物によって硝酸を窒素に還元する方法が一般的です。
生物処理の方法
生物処理の方法で一般的なのは以下の4つです。
生物処理の方法 | 使用される主な微生物 | 特徴 |
活性汚泥法 | 好気性微生物 | 最も一般的な生物処理方法。曝気槽と沈殿槽から成る。 |
MBR(膜分離活性汚泥法) | 好気性微生物 | 活性汚泥法と膜ろ過を組み合わせ方法で省スペースで対応できる |
担体法 | 好気性微生物 | 微生物の住む担体が曝気槽から移動しないため、安定した処理が可能 |
嫌気処理法 | 嫌気性微生物 | 曝気を必要とせず、メタンガスをエネルギーとして活用できるので省エネ |
嫌気処理法以外の3種類は好気性微生物を活用した生物処理となります。それぞれの概要と特徴を確認していきましょう。
活性汚泥法
「活性汚泥」と呼ばれる微生物の集合体が入った水槽に汚水を入れることで汚れを分解する方法で、生物処理の中では最も一般的です。
活性汚泥が入る水槽のことを「曝気槽(ばっきそう)」と呼び、この曝気層に酸素を送り込むことで微生物の動きが活発になります。活性汚泥と混ざった排水は沈殿槽に送られて、分解された汚れと水に分かれていく仕組みです。上澄み水は放流され、汚れは余剰汚泥として処理されます。
生物処理に欠かせない曝気(ばっき)については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。
MBR(膜分離活性汚泥法)
MBR(Membrane Bio Reactor)は活性汚泥法と膜ろ過法を組み合わせた生物処理方法です。微生物が有機物を分解してできた汚泥をMF膜やUF膜を通すことで、固液分離させます。
活性汚泥法は曝気層の他に沈殿槽が必要ですが、MBRは曝気層内に膜ユニットを設置するため、省スペースで対応できることが最大のメリットであり、採用する企業が増えてきています。
活性汚泥法とMBRは以下の記事でさらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
担体法
担体法とは、担体(たんたい)と呼ばれる微生物の住処を活用して行う生物処理方法です。担体はプラスチックやスポンジのものが多く、大きさは1つあたり約1cmで細かい孔があいています。
活性汚泥法との一番の違いは微生物が曝気槽から移動しないということです。活性汚泥法は曝気槽から沈殿槽に活性汚泥が移動し、沈殿槽から返送汚泥として曝気槽に戻ってきます。担体は常に曝気槽に置いておくため、微生物が沈殿槽に移動しません。処理する排水の量が大きく変動する現場では、担体法によって安定した処理ができます。
嫌気処理法
酸素を必要としない嫌気性微生物を使った有機物を分解させる生物処理方法で、代表的なのは有機物をメタンや二酸化炭素に分解するメタン発酵法です。
好気性微生物を活用する生物処理方法とは異なり、酸素を供給する曝気が不要なので動力を必要とせず、発生するメタンガスを取り出せばエネルギーとしても活用できるため、省エネの生物処理方法として注目されています。
ただし、好気性微生物の処理と比較して処理が遅いため、微生物が住む反応槽が大きくなるなどがデメリットです。
生物処理でお困りならミズサポにご相談ください
生物処理は自然界にいる微生物を活用する環境に優しい排水処理方法で、有機物の分解に優れているため、BODやCODが多く含まれる排水の処理で高い効果を発揮します。
生物処理には数多くの種類があるのでどれを選べばよいかわからないという人は、ミズサポまでお気軽にお問い合わせください。排水の性状などをヒアリングさせていただき、最適な生物処理業者を紹介いたします。