「有機物の排水処理には活性汚泥法が有効と聞いたけれど本当?」と疑問を持っている方もいるでしょう。
活性汚泥法は微生物の働きによって、下水処理場や工場排水の有機物を分解するために活用されている方法です。
本記事では活性汚泥法の概要と代表的な種類である標準活性汚泥法と膜分離式活性汚泥法(MBR)を解説しています。活性汚泥法について詳しく知りたい方は必見です。
目的
活性汚泥法とは?
活性汚泥法とは、微生物の働きを活用して排水の有機物を分解・除去する生物処理方法です。排水の汚れを微生物が「食べる」ことで水をキレイにすると考えればわかりやすいでしょう。
好気性(こうきせい)と呼ばれる酸素を好む微生物が使われる活性汚泥法では、微生物が活動して有機物を分解するために、水中に酸素を供給する曝気(ばっき)が必要不可欠です。
活性汚泥法は最も一般的な生物処理方法であり、下水処理場やし尿処理場、浄化槽の他にも工場排水に含まれる有機物の処理で活用されています。
活性汚泥法の種類
活性汚泥法には多くの種類がありますが、現在の主流は以下の2種類です。それぞれの概要とメリット・デメリットをまとめた表を以下に示します。
標準活性汚泥法 | MBR | |
処理プロセス | 曝気層と沈殿槽の2つの水槽を使う最も一般的な活性汚泥法 | 曝気槽にろ過膜に設置されており、固液分離を行う活性汚泥法と膜ろ過を組み合わせた方法 |
設置スペース (沈殿槽の必要性) | ✕ 水槽が2つ以上必要 | ◯ 水槽が1つで済む |
処理水 | △ 沈澱の状況によってSS濃度が左右する | 〇 膜ろ過でSSの少ない水 |
初期費用 | 〇 比較的安価 | △ 標準活性汚泥法と比べると高額 |
ランニングコスト | 〇 機械のメンテナンスや余剰汚泥の処理費用が中心 | △ 膜の交換を定期的に行う必要がある |
標準活性汚泥法
標準活性汚泥法は、曝気槽と沈殿槽の2つの水槽を使って生物処理を行う方法です。上のイラストのとおり、原水と活性汚泥を曝気槽内で混合し、混合液を沈殿槽で汚泥と処理水に分離します。活性汚泥法は、曝気槽の汚泥濃度を適切に管理する必要があるため、沈殿槽で分離した際、維持に必要な汚泥を曝気槽に返送、増えすぎた汚泥を余剰汚泥として処分する仕組みです。
標準活性汚泥法の処理プロセスをまとめると下記の通りです。
- 曝気槽で活性汚泥と原水を混合する
- 沈殿槽で活性汚泥を沈殿させる
- キレイになった上澄みを処理水として流出させる
- 沈殿した活性汚泥の一部を曝気槽に戻す(返送汚泥)
- 残った活性汚泥を排出する(余剰汚泥)
曝気槽と沈殿槽の2つの水槽が必要なので設備自体は大きくなりますが、構造はシンプルですので運用コストが安価に収まりやすいのがメリットです。
膜分離式活性汚泥法(MBR)
膜分離法活性汚泥法は活性汚泥による生物処理と膜ろ過による物理処理を組み合わせた方法です。別名MBR(Membrane Bio Reactor:メンブレンバイオリアクター)と呼ばれています。
膜分離式活性汚泥法は曝気層内にMF膜と呼ばれるろ過膜のユニットが設置されており、汚水をユニットでろ過することで固液分離させる方法です。上のイラストからもわかるとおり、活性汚泥法では曝気層と沈殿槽という2つの水槽が必要でしたが、膜分離式活性汚泥法では1つの水槽で処理できます。
- 曝気層で活性汚泥と原水を混合する
- ポンプを使ってMF膜ユニットから処理水を引き出す
- 余剰汚泥を排出する
このようにポンプを使って強制的に固液分離をさせるため、標準活性汚泥法で課題だった「活性汚泥が沈まない」「処理水が濁る」といったトラブルが起こる可能性も低減させることができます。
膜分離式活性汚泥法は省スペースで標準活性汚泥法の課題を解決できるので採用する企業が増えてきていますが、MF膜の目詰まりを防ぐために洗浄と定期的な交換が必要になるのがデメリットです。
活性汚泥法との併用もできる『AT-BCシステム』
活性汚泥法は曝気槽に浮遊する微生物を活用する生物処理方法となります。生物処理の中には生物膜法(担体法)と呼ばれる付着式のタイプもあり、それを活用したのが『AT-BCシステム』です。
AT-BCシステムは、バチルス菌を添加した担体の接触体が排水に触れることで、有機物やBODを分解します。活性汚泥法で使用する曝気槽の上に装置を生産ラインを稼働しながら後付けで乗せることも可能です。
もし排水の性状や量が変わり、従来の活性汚泥法による生物処理装置で能力が足りなくなっているのであればAT-BCシステムをご検討ください。導入すれば大幅にBODを低減できるため、結果として曝気槽をスリム化できる可能性もあります。
活性汚泥法をご検討の方はミズサポにご相談ください
活性汚泥法は微生物の働きを活用する排水処理方法であり、有機物を含んだ排水をきれいにするためには欠かせません。
それぞれの検討方法としては、活性汚泥法は、運用コストや管理のしやすさが優れており、一般的な下水処理施設や中規模の工場排水処理で幅広く使われております。
一方でMBR法は、スペースが限られている場合や高い処理水質が求められる場合に適しており、特に排水を再利用したい場合や、厳しい環境規制がある現場に向いています。
活性汚泥法の導入や更新をお考えの方はミズサポまでご相談ください。お客様の状況をヒアリングさせていただき、最適な生物処理業者を紹介いたします。