排水処理とは?3つの排水処理方法や具体例をわかりやすく解説

排水処理とは?3つの排水処理方法や具体例をわかりやすく解説

水は自然や私たちの生活に欠かせないもので、汚れたままにすると生物に悪影響を与えたり、有害な物質によって近隣住民に健康被害が出たりします。

過去には、工場の汚染物質を含んだ汚水が河川に流れ出し、水道水として処理されたにも関わらず、飲んだ地域住民が食中毒になったという事例もあるんですね。

そのため、排水の特徴に合わせて適正な処理を行ってから、下水道や川・湖・海へ流すことが必要です。

また最近では、処理した水を資源として再利用する動きも増えつつあり、排水処理の重要性が高まっています。

この記事では排水処理方法の種類やメリット・デメリットを解説して、具体例も紹介していますので、排水処理について網羅的に知りたい方は必見です。

排水処理とは?

排水処理とは、工場や家庭で汚れた水を河川に流す前に、汚れを取り除くことです。河川などに放流する場合は、排水基準が定められており、基準値に入れるために排水処理を行います。

まずは河川に汚水が入った場合、元の水質に戻るまでにどのくらいの水量で薄める必要があるのか、身近なものを例に見ていきましょう。

  • 味噌汁1杯(150ml)
    BOD:37,000mg/L
    水質を元に戻すために必要な水の量:1,110L(例:お風呂5.5杯分) 
  • 牛乳コップ1杯(150ml)
    BOD:90,000mg/L
    水質を回復するために必要な水の量:2,700L(例:お風呂13.5杯分)

※BOD(生物化学的酸素要求量):一般的に、BODの値が大きいほどその水質は悪いと言える。水中の有機物を酸化分解するために、微生物が必要とする酸素量を表したもの。

このように、わずかな味噌汁や牛乳でも、元の水質に戻す為には大量の水が必要になるため、少ない水で効率的に処理するには、排水の特徴に合わせて最適な処理方法の選択が必要です。

3つの排水処理方法のメリット・デメリット

工場における排水処理は、除去したい物質や排水の成分などに応じて、主に物理処理、化学処理、生物処理の3つの処理方法に分けられます。

それぞれの処理方法の概要とメリット・デメリットを確認していきましょう。

物理処理

物理処理とは、汚れた水から固形物や浮遊物を取り除く方法です。

スクリーンと呼ばれる鉄製の網で固形物を取り除いたり(スクリーンろ過)、遠心力を利用して固形物を取り除いたり(遠心分離)、熱した汚水の蒸気を冷やして液体にして水と汚れに分離する(減圧蒸留)などの方法があります。他にも最近では、海水を淡水にするような分子レベルで精密にろ過をする方法(膜ろ過)もあります。

参考 スクリーンろ過:東洋スクリーン工業
   遠心分離   :アメロイド
   減圧蒸留   :コンヒラ
   膜ろ過    :ダイセン・メンブレン・システムズ

技術メリットデメリット
スクリーンろ過・設置と運用が簡単
・ 大きな固形物の除去
・ コストが低い
・微小な固形物や溶解物を除去できない
遠心分離・固形物や液体の分離
・機械の操作が簡単である
・分離精度が低い
減圧蒸留・高い精度で溶解した物質も除去
・低コストで大規模な処理が可能
・電気・ガス代が別途かかる
・装置の定期的なメンテナンスが必要
膜ろ過・高い精度で微細な微生物や溶解した物質の除去ができる
・電気代が安い
・小~大規模な設備まで対応可能
・膜の目詰まりや劣化によるメンテナンスが必要
・高い初期投資が必要

※排水の特徴や除去する物質・粒子サイズによって、効果的な技術が変わります。ご不明な場合はネクストリーへご相談ください。

化学処理

化学処理とは、化学反応を利用して水の汚れを取り除く方法です。

凝集剤と呼ばれる薬品を投入して汚れを分離したり(凝集分離)、アルカリ性や酸性の排水を希硫酸や苛性ソーダを利用して中和したり(中和処理)、塩素やオゾンを利用して有機物や有害物質を分解・酸化して無害化する(酸化処理)などの方法があります。

参考:凝集処理:ネクストリー

   中和処理:トーケミ

   酸化処理:日立プラントサービス

技術メリットデメリット
凝集処理・水中の汚れを固めて除去
・低コストで大規模な処理が可能
・薬品の選定、投入量によって処理効果が左右される
・投入作業が必要
中和処理・酸性またはアルカリ性の排水を中性にできる
・操作が簡単
・希硫酸や苛性ソーダなどの毒劇物を使用する危険を伴う
酸化処理・有機物や微生物を酸化し、分解、除去が可能・酸化剤が毒劇物に該当する場合がある

※排水の特徴や除去する物質に応じて適切な薬品の選択が必要です。ご不明な場合はネクストリーへご相談ください。

生物処理

生物処理とは、微生物の力で汚れの原因となる有機物を分解する方法で、自然環境の中で見られる微生物の生態や代謝能力を活用しています。

その中でも活性汚泥法は最も一般的な処理方法で、「活性汚泥」と呼ばれる微生物の集合体を汚水の中に入れる事で微生物が汚れを分解していき、水がきれいになります。

参考:活性汚泥法:エステム

技術メリットデメリット
活性汚泥法・有機物や窒素、リンなどの除去に優れた効果を発揮・無機物の除去には不向き
・微生物を活用するため、気温や濃度の変化に弱い

排水処理の具体例

排水処理の3種類(物理処理、化学処理、生物処理)について、以下で具体例を紹介します。

それぞれ排水の種類や解決した課題を記載していますので、参考にしてください。

物理処理の具体例 1(遠心分離機)

【概要】

業種パーティション(間仕切り)製造業
排水の種類湿式塗装ブース循環水
課題循環している水から塗料カスを除去したい

遠心分離機は、連続して何度も排水を機械に通す事で徐々に汚れを取り除き、水をきれいにします。

下の写真は遠心分離機を通す前の写真と4回機械に通した後の写真です。汚れを取り除いた後はきれいな水と汚泥に分かれます。

左:処理前、右:処理後

物理処理の具体例 2(膜ろ過)

【概要】

業種紙加工業(パッケージの印刷)
排水の種類水性ニス排水
課題産業廃棄物の処分費用の削減

膜ろ過を導入する前は、出てくる廃液(月間20㎥)を100万円の費用をかけて処分していました。

この廃液を特殊な膜を使ってろ過すると下の写真の様に、白色の廃液が無色透明になり、専門機関で水質分析した結果、下水道へ放流できる基準をクリアした事例です。

これまで100万円かかっていた費用が15万円まで削減することができました。(→金額の表を入れる)

化学処理の具体例 1(凝集処理)

【概要】

業種金属製品加工業(バレル研磨)
排水の種類バレル研磨排水
課題バレル研磨機の導入によって、新たに排水処理をしなければならなくなった

バレル研磨機から出てくる廃液をドラム缶に集め、特殊な凝集剤と小型排水処理装置を使って、汚れと水を分離しました。

凝集剤は、粉末一剤型凝集剤と呼ばれる一種類で「凝結+pH調整+凝集」の3つの働きをもつ薬品を使用。毒劇物にも該当しないので、安心して使える薬品です。

また装置もコンパクトで、設置や配管工事は1日で終わり、翌日から製造を開始することができました。

化学処理の具体例 2(中和処理)

【概要】

業種リネンサプライ業(洗濯)
排水の種類洗濯排水
課題排水量が多くなり、処理が必要となった

事業拡大に伴って排水量も多くなり、1日の排水量が下水道の排水基準の50㎥を超えたため、中和処理が必要となり、中和処理装置を導入しました。

設置スペースが狭かったので、可能な限り小さな装置となるように設計したのがポイントです。

生物処理の具体例(活性汚泥法)

【概要】

業種食品製造業(乳製品)
排水の種類加工・洗浄排水
課題曝気槽が日常的に発泡していて、処理水質が悪化していた

微生物の力を活用して水を綺麗にする活性汚泥法では、処理がうまくいっていない原因を特定することが重要です。この時は十分に調査を行った結果、放線菌という微生物が泡の原因だと分かり、放線菌の繁殖を抑えるために脂質の除去を行いました。

その結果、写真のように泡の発生を抑えることができ、処理水質が安定した事例です。また、泡対策一覧表を作成し、誰でも対応ができるようにマニュアルを整備しました。

特徴のある排水処理企業を紹介

日本にはとても沢山の排水処理に関わる企業があります。その中でも特徴のある以下の企業を紹介します。

  • 株式会社ネクストリー
  • ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社
  • 株式会社コンヒラ
  • 株式会社エステム

株式会社ネクストリー

株式会社ネクストリーは、化学処理の中でも凝集処理を専門とする企業です。凝集処理で使用する薬品に関しては沢山の知識と経験を持っています。無料で凝集試験を行ってくれるので、これから排水処理を始めようと考えている企業は一度相談すると良いでしょう。

また1回の処理が1000Lまでの小型の排水処理装置を扱っている日本でも数少ない企業なので、1日の排水量が10㎥以下であれば、最初に相談する企業としておすすめです。

ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社

ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社は、物理処理の中でも膜技術を専門とする企業であり、高品質かつ信頼性の高い膜技術を提供しています。

上水~下水、医療、食品、化学工業、産業排水処理と幅広い分野に膜処理技術を提供しているため、様々なニーズに対応出来る製品が用意されているのが特徴です。

株式会社コンヒラ

株式会社コンヒラは、物理処理の中でも減圧蒸留処理を得意とする企業です。減圧蒸留装置の遠隔操作システムをいち早く導入し、現場作業者の負担を大幅に軽減しました。

1973年創業以来、顧客の細かなニーズに応えて成長し、他社が諦めた案件でも積極的に解決へ向けて取り組み、業界初の技術開発を実現してきた企業です。

株式会社エステム

株式会社エステムは、生物処理を専門とする企業です。民間企業の排水処理場の立ち上げから下水処理場の運転管理まで生物処理に関する様々な業務を請け負っており、非常に豊富な経験と知識を有しています。また排水処理業界では珍しく女性の社員が非常に多いのも特徴です。

更に最近ではクラウド型の遠隔監視システム「SACRA」を開発し、24時間365日管理に必要な情報を収集できるようになったことで、迅速な対応や処理水質の安定に繋がっています。

排水処理の方法については分かったけれども・・・

排水処理の方法や特徴のある企業については分かったけれども、それでもまだ以下のお悩みを持つ人も多いでしょう。

  • 具体的に何からやったら良いのかわからない
  • 自社の排水の特徴や粒子サイズがわからない
  • 自社の排水処理にはどの方法が良いのかわからない
  • もっと詳しく教えて欲しい

そんな時には、ネクストリーへご連絡ください。専門スタッフが御社の状況を詳しくヒアリングさせて頂き、御社に合った排水処理方法をご紹介させていただきます。

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