「ランニングコストの削減やSDGsの取り組みの一環として工場排水を再利用したい!」とお考えではありませんか?
工場排水は用途に合わせて再利用できれば、工場用水の使用量削減につながるため、企業と環境の双方にとって大きなメリットがあります。
本記事では工場排水の再利用について、メリットやデメリット、再利用するための処理方法などをわかりやすく解説しています。工場排水の再利用を検討している方は必見です。
目的
工場排水の再利用が注目されている理由
画像引用:国土交通省「世界の水資源」
上の画像は地球上に存在する水の量を表したグラフです。地球は宇宙から見ると青く輝いており、豊富な水に囲まれていると皆さんも思うかもしれませんが、その大部分は海水であり、私たちが利用できる河川や湖沼などの水は全体の0.01%しかありません。
工場排水の再利用は、ランニングコストの削減の他にも、SDGs(持続可能な開発目標)とも密接に関わっています。工場排水の再利用による水資源の確保は多くの企業で取り組みやすい目標であり、注目されているといえるでしょう。
工場排水を再利用する用途
工場排水を再利用する目的には以下があります。
- 機械の冷却水として再利用する
- 同じ生産工程で再利用する
それぞれの内容を少し掘り下げて確認していきましょう。
機械の冷却水として再利用する
工場で使用する生産設備は、使用中の熱が原因でパフォーマンスの低下や故障が発生する場合があります。それらの不具合を防ぐのが、機械の冷却水です。
- 印刷機のロールの冷却
- 金型を加熱するヒータ背面の熱逃がし
- 射出成形機のノズルの冷却
上記は冷却水を使用する場面の一例です。機械の冷却水は直接的に製品の品質に影響しないため、工業排水の再利用に適しているといえます。
同じ生産工程で再利用する
理想的なのは、同じ生産工程で工場排水を再利用することです。
例えば、金属部品の切削や洗浄で使用した水を一旦回収し、薬品処理や膜処理を行ってから同じ工程で再利用すれば、新規の工場用水の使用量はかなり少なくなるでしょう。
ただし、同じ工程で工場排水を再利用する場合は、水質の確認を入念に行う必要があります。新規で使用する工場用水と比較して水質に問題がないと判断した上で再利用しましょう。
工場排水を再利用するメリットとデメリット
工場排水を再利用する場合はメリットとデメリットを把握することが大切です。特にデメリットを知ることで、自社で工場排水が再利用できるかどうか判断できるようになります。
メリットとデメリットそれぞれを以下で確認しましょう。
メリット
工場排水を再利用するメリットは主に以下のとおりです。
- 工場用水の使用量が減り、コスト削減につながる
- 工場排水が減り、環境への負荷を減らせる
- 企業の社会的信頼度が向上する
工場用水の使用量が減ればコスト削減につながりますし、仮に工場用水の使用量が上限間近の企業であれば、工場排水を再利用することで必要な水を確保することができます。
また水を再利用していることは、CSR(企業の社会的責任)の一環としても社外にアピールできるので、企業の社会的信頼度を向上させることが可能です。
デメリット
一方、工場排水を再利用するデメリットは以下となります。
- 水質を自社責任で管理する必要がある
- 再利用の設備導入費用や維持・管理費用が高額になるケースがある
工場排水を再利用するデメリットは、水質管理を自社で行う必要があることです。一度使用した水は様々な汚れや有害物質を含んでおり、工場用水と同様の水質に戻すための処理が必須となります。
水質が製品の品質に影響する場合、再利用に必要な設備を導入する際のイニシャルコストや維持や管理にかかるランニングコストが高額になり、新規で工場用水を使用する方が安価で済むケースもあるでしょう。
工場排水を再利用する方法
工場排水を再利用する方法には主に以下の2つがあります。
- 薬品処理
- 膜処理
それぞれの処理を組み合わせることもあります。薬品処理と膜処理について以下で確認していきましょう。
薬品処理
薬品処理とは、その名のとおり薬品を使って排水中の汚れを取り除く方式です。有名な水処理の薬品に「凝集剤(ぎょうしゅうざい)」があります。凝集剤は水の中の汚れに作用して、キレイな水と汚れの成分に分けるための薬品です。
ただし、再利用を検討する場合は、薬品成分(塩化物や高分子)が処理水に残留することに注意しましょう。再利用を繰り返すとこれらの濃度が高くなり、設備や製品に悪影響を及ぼす可能性があります。
凝集剤を使っての薬品処理は、以下の記事でわかりやすく解説していますので、参考にしてください。
参考記事:排水の凝集処理とは?処理の流れや事例をわかりやすく解説
膜処理
膜処理は穴のあいた特殊な膜に排水を通して、汚れを除去する方法です。理科の授業で実験した「ろ過」をイメージすればわかりやすいでしょう。ろ過なので、処理水に余計な成分がほとんど混ざらず、原水濃度に変化があっても一定の水質を保てることがメリットです。
膜に空いている穴の大きさでMF膜・UF膜・RO膜の3種類があります。RO膜は1nm~0.1nmという超微細な異物の除去が可能です。膜処理については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。
参考記事:排水処理の膜ろ過とは?3つの種類や相談できる企業を紹介
工場排水の再利用は用途を考えることが大切
工場排水は再利用することで、工場用水の使用量や排水量を削減できるので、環境への負荷を下げることが可能です。SDGsやCSRの観点からも工場排水の再利用に取り組めば、環境に配慮した企業だと社外にアピールできます。
ただし、工場排水の再利用は処理にコストがかかり、水質の責任を自社で負う必要があるなどのデメリットもありますので、再利用する用途をあらかじめ考えることが大切です。
工場排水の再利用をご検討の方は、ミズサポまでご相談いただければ、排水処理のプロ目線でアドバイスします。ぜひお気軽にお問い合わせください。