「凝集処理とよく聞くけれど、なんだかよくわからない…。」とお困りの方もいらっしゃるかもしれません。
凝集処理は「凝集剤（ぎょうしゅうざい）」と呼ばれる薬品を使った処理全般のことです。凝集処理で使用される凝集剤はいくつもの種類に分かれており、間違った種類の凝集剤を使うと全く効果を発揮できない可能性もあります。
本記事では排水の凝集処理について、基礎的な内容をわかりやすく解説します。記事を最後までお読みいただくと、凝集剤の役割についてもご理解いただけると思います。
目的
排水の凝集処理とは？
排水の凝集処理とは「凝集剤」と呼ばれる薬品を使うことで、水中の汚れを固形化させる方法です。
身近にあるコーヒーを例にして考えてみましょう。コーヒーは肉眼で見えないほどの微細な黒の粒子が水中に分散しているため、黒く見えています。ここに凝集剤を入れると、微細な粒子同士がくっついて少しずつ沈澱していき、透明な水と黒い汚れの2層に分かれます。水の中から黒い汚れを除去するのが凝集処理です。
凝集処理の流れ
それでは凝集処理の流れについて、さらに細かく確認していきましょう。凝集処理を大きく分けると以下3つのステップとなります。
- 一次凝集＝フロックを作る
- 中和処理＝水中のpHを調整する
- 二次凝集＝フロックを大きくする
それぞれの処理について、使う薬品を交えて解説していきます。
1.一次凝集＝フロックを作る
水が汚れている状態というのは、目に見えない小さな粒子が沈まずに水中を浮遊している状態です。少し専門的な話をすると、汚れの原因となっている粒子はマイナスに帯電しています。粒子同士がマイナスに帯電しているため、反発し合って水中に分散しているのです。
凝集剤はプラスに帯電しており、磁石のような作用があると考えればわかりやすいでしょう。マイナスの粒子とプラスの凝集剤が結びつくことで、粒子同士がくっつき肉眼でも確認できる汚れとなります。
ちなみに一次凝集ではPACや硫酸アルミニウムなどの無機凝集剤が使われるのが一般的です。
2.中和処理＝水中のpH値を調整する
一次凝集で用いるPACや硫酸アルミニウムなどの無機凝集剤の多くは酸性です。例えば、塩化第二鉄はpHが1程度の強い酸性のため、投入した後は水が強い酸性の状態となります。
水が酸性のままでは、二次凝集がうまくいかないだけでなく、水槽が錆びる原因にもなるので、苛性ソーダや消石灰などのアルカリ性の薬品による中和処理が必須です。
3.二次凝集＝フロックを大きくする
一次凝集で作った基礎フロックは、沈澱するまでに時間がかかります。そこで登場するのが「ポリマー」と呼ばれる高分子凝集剤です。
ポリマーは基礎フロック同士をくっつける接着剤のような役割をすると覚えておくとわかりやすいでしょう。フロックが大きくなればなるほど、水の底に沈澱する速度が早くなります。
基礎フロックをポリマーでくっつけたものが直径1～3mm程度の「粗大フロック」であり、この工程が二次凝集です。
ちなみに二次凝集を行うポリマーは、プラス電荷のもの、マイナス電荷のもの、両方の特性を持つものがあり、細かく分けると100種類以上もあります。
粉末一剤型凝集剤という選択肢
解説してきたとおり、凝集処理は3つの工程でそれぞれ異なる薬品を使用します。処理する排水の濃度やpHの値によって、薬品の量を調整する必要があり、管理の手間にわずらわしさを感じている方もいらっしゃるかもしれません。
実は凝集剤の中には「粉末一剤型凝集剤」と呼ばれる薬品があります。1つの薬品で一次凝集と二次凝集の両方の働きをするリンスインシャンプーのような存在であり、凝集処理の専門知識が必要ありません。
粉末一剤型凝集剤を使用した事例
金属加工業には「バレル研磨」と呼ばれる加工方法があり、金属粉や研磨剤が溶け込んでいる排水が出ます。（上記写真の左側参照）
このバレル研磨排水に、粉末一剤型凝集剤を投入して凝集処理したのが右側の写真です。排水に溶け込んだ金属粉や研磨剤とキレイな水が分離していることがお分かりいただけると思います。
以下の動画では粉末一剤型凝集剤を使用した凝集処理の過程を紹介していますので、参考にご覧ください。
＜参考動画：ビーカー試験：多用途型凝集剤「アクアネイチャープラス」（型番：PLS-ST01）＞
凝集処理で困ったら専門業者に相談しよう
凝集処理は、凝集剤という薬品を使用して、排水に浮遊する汚れを分離させる排水処理方法です。一般的には一次凝集・中和処理・二次凝集と段階毎で異なる薬品を使用しますが、粉末一剤型凝集剤1つで凝集処理が完結する場合もあります。
もし凝集処理でお困りであればミズサポまでご相談ください。お困りごとをヒアリングさせていただき、最適な凝集処理方法についてご提案いたします。