凝集剤ってなんだろう?【凝集剤について①】
凝集剤ってなんだろう?【凝集剤について①】
私たちの生活にかかせない水!
工場などで大量に使われた水は川に流したり再利用するのですが、環境のことを考えるともちろん汚れた水を流すことはできません。そんな時に凝集剤が登場します。
聞き慣れない単語だと思いますが、みなさんにもっと凝集剤について知っていただくために、いくつかの記事に分けて説明していきたいと思います。
今回は、凝集剤の基本的なことをご説明します。
・そもそも凝集剤ってなに?
凝集剤というのは簡単に言うと「濁った水を綺麗にする薬剤」です。
例えば、コーヒーのような黒い水があるとします。その中には黒い色を出している目に見えない小さな粒(微細粒子)が分散して浮遊していて、それが見えるので黒い水は黒く見えるんです。凝集剤をこの水に入れると、その黒い微細粒子が集まって大きくなり沈殿させてくれて、綺麗な水を抽出することができます。この作用についてもう少し詳細に話しますと、黒い粒が底に沈むまでに、凝結作用と凝集作用という2つの作用が働いていると表現することができます。
そもそもなぜ、微細粒子と水が最初から分離していないのかと言うと、この微細粒子がマイナスに帯電していて、微細粒子同士で反発し合っているからです。そのため微細粒子はそれぞれが小さいまま水の中を浮遊しています。
凝結作用は、マイナスに帯電している微細粒子と、プラスに帯電している凝集剤が結びつく作用です。肉眼で認識できなかった粒子ですが、凝視で認識できるくらいに少し大きくなります。(この時できた粒を、基礎フロックと言います)
凝集作用は、凝結作用で少し大きくなった微細粒子同士をまた更に結びつけて、沈殿するくらいに大きくする作用です。肉眼で粒々がはっきりわかる大きさで、1〜3mmくらいになります。(この時できた粒を、粗大フロックと言います)
凝集剤は凝結作用と凝集作用を水に色をつけている粒子に作用させて、肉眼で見えるレベルまで粒子を集めて沈殿させて、上積みの綺麗な水を取り出すための薬剤なんです。
・凝集剤って何に使うの?
我々が凝集剤を使う主な目的は、物を作るために使った水を、皆さんが再び使えるように綺麗にして流すことです。
例えば、お米を洗うと水が濁って白いとぎ汁になりますよね。家庭では濁ったままの状態で下水に流しているところがほとんどだと思いますが、工場ではそうもいかないのです。
弊社のある富山県に、鱒寿司を製造する工場があります。その工場ではお米を洗った後、なんと、毎日50トンほどの大量のとぎ汁が出ます。環境のことを考えると、そんな大量の汚れた水を家庭のようにそのまま流すなんてことできませんよね。
というように、そのままの汚れた水だと行き場所に困ってしまうので、綺麗な水にするために凝集剤を使う凝集処理が必要となります。凝集処理によってとぎ汁の白い部分が沈殿し透明な水が出てくるので、沈殿した部分は取り除き、透明になった水を更にいくつかのプロセスを通した後に川や下水処理場に流したり再利用したりします。
・どういう企業に使われているのか?
凝集剤は何かを製造・加工する際に水を利用しているとても多くの工業会社様で利用されています。
弊社が取引をしている企業様の例をご紹介します。
まずは、ガラス加工の企業様。
富山県ではガラス加工業が盛んですが、製造の際に出てくる削ったガラスの粉を水で流しているため、その水を凝集処理で綺麗な水にしています。
次に、建築会社様。
壁面などに塗料を塗る刷毛を何度も洗います。その水にも凝集剤を使っています。
あとは浄水場や下水処理場でも使われていますし、雨が降った時に山から川に流れてしまう泥水を綺麗にするためにも使われます。(川に到達する前の水を塞き止め凝集処理し、綺麗にしてから川に流します。)その川には魚のアユが生息していたりするので、凝集処理によって魚たちが守られますね。
1回の現場のみでの使用や、工場での継続的に使用するなど様々ですが、弊社では500〜600社ほどの企業様と取引をしていて、他にも使用例はたくさんあります。物づくりで水を大量に使っているようなところは、ほぼ凝集剤を使っているのではないかと思います。
・凝集剤は環境に悪くない?
凝集剤は化学薬品のイメージがあり、環境に悪いと思われがちです。環境のために水を綺麗にする凝集処理ですが、「そもそも凝集剤は環境に悪くないのか?」と質問されることも多いです。特に凝集処理後の水を川に流すこともあるので、「川の生態系は大丈夫なのか?」という心配の声もあります。そこで凝集剤の安全性をテストするために、魚類毒性試験というものを受けています。魚類毒性試験とは、生きた魚が入った水に凝集剤を入れ続け、どのくらいの数の魚が死ぬか、という内容のものです。
なぜ凝集剤によって魚が死ぬのか?
凝集は粒と粒を引っ付けますが、そのために凝集剤には接着剤のような役割をするものが入っています。その接着剤の量が多いと、魚のエラなどに挟まり死んでしまいます。
弊社の製品「無機系凝集剤アクアネイチャー」は魚類毒性試験をパスしています。水量に対して1%のアクアネイチャーを入れても、全ての魚が生き残りました。土木工事などで発生する泥水の処理に弊社の製品がよく採用されているのですが、これらの水は川に流すことがほとんどなので、魚類毒性試験をパスしていると安心して使うことができますよね。
以上、今回は凝集剤の基本をご説明しました。
次回は凝集剤の中身のPAC(ポリ塩化アルミニウム)について説明いたします。