「めっき処理のラインから有害物質が漏えいして、地下水汚染が発生してしまった」
地下水汚染は、一度発生すると調査・対応・報告に多くの労力を要し、企業の信頼や操業にも影響を及ぼします。
本記事では、地下水汚染の基本から主な原因、防止策、汚染時の具体的な処理方法について紹介しています。
地下水汚染に備えたい方、すでに汚染の可能性に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
地下水汚染とは?
地下水汚染とは、地下水中に人体や自然環境に有害な物質が含まれている状態のことを指します。
重金属、有機溶剤や農薬、油、細菌などが地下水を汚染する物質の代表例です。
地下水汚染が広がると、河川や湖沼に流出して生態系に悪影響が出たり、農作物に有害物質が蓄積されて、最終的に摂取した人の健康に影響を与えたりと被害が大きくなります。
未然に防ぐことが大前提ですが、地下水汚染が発生した場合は、被害がそれ以上拡大しないように有害物質の封じ込めを行い、汚染された地下水と土壌の浄化措置を迅速に行うことが大切です。
地下水汚染の主な原因
地下水汚染の主な原因には以下があります。
- 表面処理ラインからの漏えい
- 地下タンクや配管からの漏えい
- 汚染物質の不法投棄
- 農業由来の化学物質
- 自然由来、災害による事故
この中でも、企業活動によって起こる地下水汚染の原因で多いのは、表面処理ラインからの漏えいです。
金属材料の表面に耐食性や耐摩耗性などの機能を持たせるために行う表面処理では、六価クロムやカドミウム、シアンといった重金属がよく使用されます。代表的な表面処理はめっきです。
表面処理ラインでは、酸やアルカリが高温の過酷な環境下で使用されるため、処理槽や配管、パッキンなどが劣化しやすくなります。これらが劣化すると、有害物質が混ざった処理水が漏れて地下水汚染の原因となるため、漏えい防止対策を確実に施すことが大切です。
地下水汚染を防ぐには
地下水汚染を防ぐためには、「汚さない、検知する」の2段階が重要です。
有害物質を適切に保管・廃棄したうえで、処理槽やタンク、配管の老朽化による漏えいを防ぐためのメンテナンスを確実に実施しましょう。
さらに薬品が使われる表面処理エリアには、FRP(繊維強化プラスチック)などの不浸透性の床材を敷設することで、地面への浸透を防ぐ効果が期待できます。
また、地下水汚染の対策を万全に行ったとしても、地下水の定期的な検査は必須です。
水質センサーなどの監視システムを導入することで、地下水汚染の早期発見につながり、被害を最小限に抑え、対策コストの削減にもつながります。
汚染された地下水の処理方法
万が一地下水が汚染されてしまった場合は、早急に処理を行う必要があります。主な処理方法は以下の2つです。
- 物理化学処理
- 薬品処理
それぞれの処理方法を詳しく確認していきましょう。
物理化学処理
汚染地下水をくみ上げ、物理的な分離と化学反応を組み合わせて、汚染された地下水から除去もしくは無害化する方法です。凝集沈澱、膜分離、イオン交換などで処理されます。
中でもイオン交換は地下水汚染に有効な物理化学処理です。イオン交換樹脂と呼ばれる特殊な樹脂が充填された塔に汚染された地下水を通すことで、重金属イオンを吸着して、代わりに無害な水素イオンや水酸化物イオンを放出します。処理された地下水はpH調整剤などの薬品を使って排水基準を満たしていることが確認できれば、放流も可能です。
イオン交換塔による物理化学処理は、イオン交換樹脂を再生する設備が不要の仮設タイプで現場に設置できます。工期が短くて済み、設備がコンパクトなのがメリットです。
薬品処理
汚染水の量が比較的少ない場合や、発生源が特定されておりピンポイント対応が可能な場合には、地下水をポンプアップせず、貯留して薬品処理のみを行うケースもあります。
薬品処理は、汚染された地下水に化学薬品を添加して汚染物質の化学構造を変化させて、無害化する処理方法です。自然由来の地下水汚染の場合は、薬品処理のみで処理が完了するケースもあります。
ヒ素は水に溶けやすく、自然由来の汚染物質として有名です。次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を注入してヒ素を水に溶けにくい性質に酸化させることで、地下水から分離させます。
ただし、薬品処理だけで地下水汚染を解決できる事例は多くはなく、物理処理と組み合わせる物理化学処理が一般的です。
地下水汚染でお困りの方はミズサポまでご相談ください
地下水汚染は一度発生してしまうと、早期に対応しなければ被害の拡大や、企業の信用にも直結する深刻な問題となります。
万が一、地下水汚染が発生した場合は、汚染拡大を防ぐ措置を行い、イオン交換塔などの処理設備を早急に設置した上で汚染を除去する対応が必要です。
地下水汚染の処理でお困りの方はミズサポまでご相談ください。ケースに応じた適切な処理方法のご提案致します。