汚泥脱水機は必要?仕組みや種類、導入時のポイントを解説

汚泥脱水機は必要?仕組みや種類、導入時のポイントを解説

「排水処理設備と同時に汚泥脱水機も導入するべき?」というご相談をよくお受けします。

汚泥脱水機は、効率的に汚泥を脱水する設備ですが、自社の状況に合わない機種を選ぶと、思うような効果が出ないため、導入前の確認が重要です。

本記事では、汚泥脱水機の仕組みや種類を紹介し、導入のポイントをわかりやすく解説しています。汚泥脱水機の導入を検討している方は必見です。

汚泥脱水機とは?

汚泥脱水機とは、排水処理の過程で発生する汚泥から水分を分離し、固形物を取り出す機械です

処理工程で発生する汚泥は含水率が高く、重量もかさむので、運搬・処分費用が高くなり、放置すれば衛生面の問題も引き起こします。

汚泥脱水機を用いることで、汚泥の含水率を大幅に下げ、扱いやすい固形状の脱水ケーキに変えることが可能です。汚泥の体積と重量が減るため、運搬・処分コストの削減や衛生環境の改善につながります。

汚泥脱水機のメリット

汚泥脱水機を使う主なメリットは、以下の3つです。

  • 汚泥の含水率を減らせる
  • 臭気や害虫の発生を抑えられる
  • 産業廃棄物として管理しやすくなる

汚泥脱水機は、排水処理設備と同時に導入することで多くのメリットがあります。それぞれを詳しく確認していきましょう。

汚泥の含水率を減らせる 

汚泥は水分を多く含むほど重く、産業廃棄物の運搬費や処分費が高くなります。汚泥脱水機を使って含水率を下げれば、処分量が軽減できるのでコスト削減が可能です。

汚泥に含まれる固形分の量は変わらないため、下記のとおり含水率を5%減らすと、汚泥量を50%まで削減できます。汚泥の含水率を下げることで、大幅な処理費用削減が可能です。

汚泥の含水率の計算は、以下をご参照ください。

■含水率と汚泥削減量の計算について
1000kgの汚泥(含水率95%)を含水率90%にしたときの汚泥量

1000kg(総汚泥量) ✕ 5%(固形分の割合) = 50kg(固形分の量)

◯含水率95% の場合(固形分の割合:5%) 50kg(固形分) ÷ 5% = 総重量 1,000kg
◯含水率90% の場合(固形分の割合:10%) 50kg(固形分) ÷ 10% = 総重量 500kg

臭気や害虫の発生を抑えられる 

水分を多く含む汚泥は、腐敗が進みやすく、強い悪臭を放つ原因です。この臭気は作業環境を悪化させるだけでなく、近隣環境への苦情やトラブルにつながることもあります。

湿った状態の汚泥はコバエや蚊、ゴキブリなどの害虫の発生源です。湿潤環境はカビや細菌の繁殖を助長し、作業員の健康被害を引き起こす可能性もあります。

汚泥脱水機があれば、含水率を下げて汚泥を固形化できるため、臭気や害虫発生のリスクを大幅に軽減可能です

産業廃棄物として管理しやすくする

汚泥は、水分を多く含んだ状態では、扱いにくいうえに容積も大きいため、産業廃棄物としての管理が困難です。輸送時にはタンクローリーや密閉容器が必要になるなど、処理工程全体でコストと手間がかかります

汚泥脱水機があれば、含水率を下げて汚泥を固形化できるため、産業廃棄物管理が容易です。重量や容量が大幅に減ることで、運搬効率も向上し、処分費用の削減にもつながります。

汚泥脱水機の基本的な仕組み 

汚泥脱水機の基本的な仕組みは、大きく分けると以下の通りです。

  1. 汚泥供給:排水処理装置から発生した汚泥を、汚泥脱水機に供給する
  2. 凝集処理:高分子凝集剤を添加し、微細な固形物をフロック(粒子の塊)にまとめる
  3. 脱水処理:機械的な圧搾や遠心力を用いてフロックから水分を分離する
  4. ケーキ排出:固形物(ケーキ)を排出する

この一連の流れによって、汚泥から効率的に水分が取り除かれ、扱いやすい固形物へと変わります。

汚泥脱水機の脱水方式とメリット・デメリット 

方式特徴メリットデメリット
ベルトプレス式2本のベルトで汚泥を挟み、段階的に圧搾処理能力大、連続運転可設置面積が大きい、ベルト洗浄必要
遠心分離式高速回転で比重差を利用し水分分離コンパクト、省スペース消費電力が大きい、摩耗部品多
フィルタープレス式多数のろ板で圧搾高脱水率、含水率が低くなるバッチ式で手間がかかる
スクリュープレス式ゆっくりとスクリューで押し出し低騒音、省エネ脱水率やや低い
多重円板式複数の円板で圧搾洗浄水が少ない、連続運転可初期コストが高い

上の表は以下5つの汚泥脱水機について、特徴とメリット・デメリットをまとめたものです。
それぞれの方式を詳しく確認していきましょう。

ベルトプレス式 

ベルトプレス型汚泥脱水機は、連続的に動く二重のフィルターベルトの間に汚泥を挟み込み、ローラーで段階的に圧力をかけながら水分を搾り出す方式です

連続運転が可能で、大量処理に適しており、下水処理場や工場などで広く採用されています。しかし、固形分が水から分離しにくい性質の汚泥や、油分を多く含む汚泥を処理するのには、向いていません。

装置自体が大型のため、設置スペースを確保する必要があります。

遠心分離式

遠心分離型汚泥脱水機は、高速回転するドラムの遠心力を利用して、固形分と水分を効率的に分離する方式です。短時間で大量の汚泥を処理でき、比較的コンパクトな設置面積で済みます。

回転体を高速で運転するため消費電力が大きく、ランニングコストが高額になりがちです。装置内部の摩耗も早いため、定期的なメンテナンスが必要となります。

フィルタープレス式

フィルタープレス型汚泥脱水機は、濾布で汚泥をろ過し、油圧などで高圧をかけて水分を除去する方式です。脱水後のケーキは非常に乾いた状態となり、含水率を大幅に低減できるのが最大の特徴です。

処理はバッチ式で行われるため連続運転には向かず、処理サイクルごとに濾布の洗浄や交換などのメンテナンス作業が発生します。

処理に時間や手間がかかる一方で、脱水性能の高さから医薬品工場や化学プラントなど、より乾燥度の高いケーキが求められる現場では有効です。

スクリュープレス式

スクリュープレス型汚泥脱水機は、スクリューをゆっくりと回転させながら汚泥を押し出し、水分を搾り取る方式です。低速運転で駆動するため、エネルギー消費が少なく、騒音や振動も小さく済みます。

処理能力はベルトプレスや遠心分離に比べると劣りますが、シンプルな構造で故障が少なく、メンテナンス性にも優れているのが特徴です。中・小規模の工場や汚泥の処理量が比較的少ない施設で広く利用されています。

汚泥の濃度変動に対しても安定した脱水性能を発揮できるのもメリットの1つです。

多重円板式 

多重円板式汚泥脱水機は、複数の円板を重ね合わせた構造を持ち、それぞれの円板の間で汚泥を挟み込みながら回転させることで水分を効率的に分離する方式です

従来のベルトプレスやスクリュープレスに比べ、省スペースで設置できます。低速回転で運転するため、エネルギー消費が少なく、騒音や振動も小さい点もメリットです。

濾布を使用しない構造のため目詰まりのリスクが少なく、メンテナンス性にも優れています。

汚泥脱水機を導入するポイント

汚泥脱水機は、排水処理設備と同時に導入されることが多い設備です。導入を検討する際は、以下のポイントを頭に入れておく必要があります。

  1. 廃水の性状を把握する
  2. 汚泥の脱水試験を行う
  3. 廃水量と汚泥量から費用対効果を確認する

それぞれを掘り下げて確認していきましょう。

1.廃水の性状を把握する

まずは汚泥が脱水しやすいかどうか、廃水の性状を把握することが大切です。脱水しやすいかどうかは、以下2つの項目を調べることでわかります。

  • TS(蒸留残留物):廃水を105℃で乾燥させた後に残る重さで、浮遊物と溶解物の総量
  • VTS(強熱熱量):TSを600℃で焼いた時に揮発する物質量を重量比で表した有機物の量

TSの値が大きいほど脱水しやすく、反対にVTSは値が小さいほど脱水しやすくなります。VTSの値が大きい汚泥は、有機物が多く含まれていて粘性が高いので、脱水しにくいのが特徴です。

2.汚泥の脱水試験を行う

廃水の性状を把握した後は、実際に汚泥を脱水できるかどうか試験を行い、最適な脱水方法を選定しましょう。

汚泥の脱水効率は、凝集処理の精度に大きく左右されます。汚泥の脱水試験を行う際は、凝集剤の種類や添加量についても、最適化の検討も必要です

3.廃水量と汚泥量から費用対効果を確認する

汚泥脱水機は、安価なタイプでも1,000万円以上のイニシャルコストがかかるため、現状の廃水量と汚泥量から、費用対効果を確認しましょう。

例えば、汚泥の処分費用が年間500万円掛かっており、脱水機を導入することで、処分費用を250万円にできるのであれば、導入費用が1,000万円であっても4年で回収できます。

逆に脱水機を導入しても、処分費用が400万円にしか圧縮できないとすると、投資回収には10年が必要です

このように費用対効果が大きく変わるため、汚泥脱水機が本当に必要かどうかは、排水処理設備導入時に慎重に判断しましょう。

汚泥脱水機を検討ならミズサポまでお問い合わせを

汚泥脱水機は、排水処理における汚泥処理を効率化します。含水率を低くすることで、産業廃棄物の処理費用を圧縮できるだけでなく、作業環境の改善にも貢献する装置です

もし汚泥脱水機に興味があれば、ミズサポまでお気軽にお問い合わせください。お客様の現状をヒアリングさせていただき、費用対効果の算出を行い、汚泥脱水機を導入すべきかどうか一緒に検討いたします。

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