「膜分離が廃水処理で有効と聞いたので、詳しく知りたい!」とお考えではありませんか?
膜分離は水中から取り除きたい物質に合わせて膜を選択して、物理的な方法で除去する方法です。
本記事では膜分離について原理や種類、廃水処理への活用例などをわかりやすく解説しています。膜分離について知りたい方は必見です。
目的
膜分離とは?
画像引用:東京都水道局「膜ろ過のイメージと模式図」
膜分離とは、「ろ過膜」と呼ばれるとても細かい孔のあいたフィルターのようなものに水を通すことで、水の中から取り除きたい物質を分離する方法です。
上の画像からもわかるとおり、膜を通る際に孔より大きな物質は通り抜けれずに取り除かれます。理科の実験で行った「ろ過」やフィルターコーヒーをイメージすればわかりやすいでしょう。
膜分離の種類
画像:膜分離に使用される膜の種類と粒子の大きさのイメージ
膜分離に使用される膜は、孔の大きさによって以下の3種類に分けられます。
- MF膜(精密ろ過膜)
- UF膜(限界ろ過膜)
- RO膜(逆浸透膜)
上の画像のとおり、孔の大きさはMF膜>UF膜>RO膜となります。それぞれの膜の特徴について確認していきましょう。
MF膜(精密ろ過膜)
MF膜は「精密ろ過膜」のことです。約0.1~1㎛(マイクロメートル)程度の粒子が除去できる膜で3種類の中でも最も網目が粗いと覚えておきましょう。
網目が粗いので、その他の膜を通す前工程に使われることも多く、比較的大きな粒子を取り除く際に使われる膜だといえます。
UF膜(限界ろ過膜)
UF膜は約1㎛~1㎚(ナノメートル)の粒子やウイルスを除去する「限界ろ過膜」のことです。MF膜よりはるかに小さな粒子はろ過しますが、イオンなどは透過します。
工場の廃水処理で最も多く出番があるのがUF膜であり、金属加工油、洗浄廃水、フレキソインキ廃水など様々な用途で使用されています。
RO膜(逆浸透膜)
RO膜は1㎚~0.1㎚というナノレベルの分子やイオンを取り除ける「逆浸透膜」です。3種類の膜の中で最も網目が細かく、最も高価な膜となります。
RO膜は高圧ポンプで水に圧力をかけて膜を通過させます。水分子よりも大きなイオンなどは通過させませんが、網目が非常に細かいので、MF膜などでの前処理が欠かせません。
膜分離のメリット・デメリット
膜分離を廃水処理で活用するためには、まずメリットとデメリットを理解することが大切です。メリットとデメリットを以下で確認していきましょう。
メリット
膜分離のメリットは大きく以下の5つです。
- 高精度で除去したい物質を分離できる
- 設備がコンパクトで済む
- 全自動で専門知識が不要
- 廃水濃度を気にする必要がない
- 産廃量が削減できる
膜分離の最大のメリットは「廃水処理に関する専門知識」が不要ということです。物理処理で処理したい廃水を設備に通すだけで完了し、担当者に負担がかかりません。
また廃水の濃度が変わっても、基本的には処理水の水質は変わりません。薬品処理の場合は、廃水の濃度が変わると薬品の投入量も変わるため、都度調整が必要です。
デメリット
一方、膜分離には以下のようなデメリットがあります。
- 設備が比較的高額
- 膜が汚れて詰まることがある
膜分離のシステムは1日500Lを処理する一番小さなモデルでも数百万円レベルであり、他の廃水処理設備と比較しても高額です。専門知識が不要で調整も容易というメリットもありますが、イニシャルコストが導入のネックというユーザー様も多いでしょう。
またファウリングという不具合も膜分離特有のデメリットです。ファウリングとは膜の孔が詰まってしまう現象で、一度起きると処理水を得るのに時間がかかるようになるため、処理コストが上がってしまいます。ファウリングを防ぐためには、定期的なメンテナンスが必須です。
膜分離を活用した廃水処理
膜分離を活用した廃水処理には以下のようなものがあります。
- 工場排水の処理
- 廃水の再利用
- 難分解性物質の処理
それぞれを以下で確認していきましょう。
工場排水の処理
工場では生産の過程で汚れた水が出るのが特徴です。水質汚濁防止法で工場排水には排水基準が設けられており、一定の水質にするために膜分離も活用されています。
金属加工や洗浄後に出る廃水を膜に通すことで、排水基準内に収めることが可能です。ただし、実際に排水基準内になるかどうかはあらかじめテストを重ねて検証する必要があります。
工場排水の処理に膜分離を利用する最大のメリットは、調整が容易という点です。他の薬品処理や生物処理の場合、薬品や微生物の調整が必要ですが、膜分離は物理処理のため調整の必要がありません。
廃水の再利用
膜分離は廃水中の不要な物質を取り除けるため、透過水を再利用できる可能性もあります。
再利用の例として有名なのが、国際宇宙ステーションで行われているRO膜による尿の飲料水化です。尿をRO膜に通すことによって、尿に含まれる塩分や尿素、アンモニア、微生物といった不純物が取り除かれて、純水の透過水が得られます。
その他にも工場で出る廃水を膜分離して、機械の冷却水などで再利用することもあります。詳しくは以下の記事で紹介していますので、合わせてご確認ください。
参考記事:工場排水は再利用できる?メリット・デメリットや事例を解説
難分解性有機物の処理
膜分離は生物処理で処理しきれない難分解性有機物の処理にも有効です。
難分解性有機物とは、微生物によって100日間分解されなかった有機物のことを指します。以下の記事でも解説しているとおり、有機物の処理には生物処理が有効ですが、難分解性有機物は処理できないため、膜分離によって物理的に取り除くことが必要です。
参考記事:有機排水とは?有効的な処理方法や処理のポイントを解説
膜分離でお困りならミズサポにご相談ください
膜分離は水処理に関する特別な知識がなくても高度な処理水が得られるのが最大のメリットです。その他の処理方法で効果が出ない場合は、膜分離での処理を検討してみましょう。
膜処理はその他の処理方法と比較すると設備が高額になる傾向です。コストを知りたい方はミズサポまでご相談ください。お客様の現状をヒアリングさせていただき、最適な方法をご提案させていただきます。