ノルマルヘキサン(n-H)抽出物質とは?排水基準や処理方法を解説

ノルマルヘキサン(n-H)抽出物質とは?排水基準や処理方法を解説

「ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水が基準値まで落とせなくて困った…。」とお困りではありませんか?

ノルマルヘキサン抽出物質(n-H)を含む排水は、工場の稼働状況や生産する製品の変更によって、大きく変動する場合もあります。

本記事では、ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水の特徴や処理方法について解説しています。実際に処理した事例も紹介していますので、処理にお困りの方は必見です。

ノルマルヘキサン(n-H)抽出物質を含む排水の特徴

ノルマルヘキサン(n-Hと略される場合もある)とは、有機溶剤の一種で塗料や接着剤など幅広い用途で使用されている無色透明の液体です。水に溶けにくく、油分をよく溶かして、揮発しやすいという性質を持ち、廃水から油分などを抽出する際に使用されます

  1. 廃水の試料にノルマルヘキサンを加えて抽出される
  2. 80℃でノルマルヘキサンを揮発させたときに揮発しないで残留する

上記2つの条件に当てはまるものが「ノルマルヘキサン抽出物質」です。

ノルマルヘキサン抽出物質=油分と考えている人もいるかもしれませんが、界面活性剤や洗剤、染料、ワックス、アルコールなども当てはまります。

またノルマルヘキサン抽出物質の排水中の濃度は、工場の稼働状況や生産する製品の変更に影響を受けるため、既存の排水処理装置で処理が追いつかなくなるケースが多いのも特徴の1つです

ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水の排水基準

水質汚濁防止法では、以下のとおり排水基準が定められています。

  • 鉱油類含有量:5mg/L
  • 動植物油脂類含有量:30mg/L

鉱油類と動植物油脂類のどちらの基準が適用されるかは、事業場や取り扱っている排水の種類によって異なるので注意が必要です。一般的には機械油や合成油などを使用している場合は鉱油類の排水基準、食品工場のようにサラダ油など自然由来の油を使用している場合は動植物油脂類の排水基準が適用されます。

ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水の処理方法

ノルマルヘキサン抽出物質は以下4つのパターンで、排水処理方法が変わってきます。

  • 動植物油
  • 鉱油
  • 動植物油と鉱油が混ざっている
  • ノルマルヘキサン抽出物質がエマルジョン化している

それぞれを掘り下げて確認していきましょう。

動植物油

動植物油の排水処理に有効なのは生物処理です。

生物処理は微生物の力によって水中の汚れを分解してキレイにします。動植物油を含む排水は基本的に有機排水のため、生物処理によって効率的な処理が可能です

しかし、油分が多すぎると微生物の活動が滞ってしまい、生物処理がうまくいかないなどトラブルの原因となるため、事前に物理処理や薬品処理での前処理を行いましょう。

鉱油

鉱油は以下の方法で取り除くのが有効です。

  • グリーストラップ:浮かび上がった油をオイルセパレーターで分離する
  • 浮上分離法:排水中に微細な泡を送り込み、油分を浮かせる
  • 吸着法:吸着剤によって油分などを除去する
  • 薬品処理:凝集沈殿法など薬品を使って除去したい物質を水から分離させるる

動植物油では生物処理が有効でしたが、鉱油は微生物での分解速度が遅いため、有効な方法ではありません。物理処理と薬品処理を併用することで、鉱油を効率的に除去できます。

動植物油と鉱油類が混ざっている

ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水は、動植物油と鉱油がどちらも混ざっている場合が多くあります

この場合は、まずグリーストラップなどの前処理で鉱油を取り除いてから、その後に薬品処理や生物処理で動植物油を取り除くのが一般的です。前処理ができていないと、その後の薬品処理や生物処理で悪影響が出る可能性が高くなります。

ノルマルヘキサン抽出物質がエマルジョン化している

ノルマルヘキサン抽出物質が※エマルジョン化している排水の場合は、グリーストラップや浮上分離法などで除去できない場合があります。

ここで有効となるのが減圧蒸留という方法です。減圧蒸留とは廃液を減圧下に置いて蒸留することで沸点が低くなることを活用した方法です。水分と油分の沸点の温度差を利用して分離を行います

※エマルジョン化(乳化):水と油など本来混ざり合わないものが混ざり合う状態のこと

ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水を処理するポイント

ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水は以下のステップで処理しましょう。

  1. 油分の性状と由来を把握する
  2. 性状に合わせて処理方法を検討する
  3. 処理水の検証は外部の分析機関を活用する

まずは油分の性状と由来を把握します。排水中のノルマルヘキサン抽出物質はSS(懸濁物質)に由来するものとエマルジョン化しているものに分けることが可能です。また油分の由来によって、排水基準が変わるので事前に確認しましょう。

次に性状に合わせて処理方法を検討します。SSに由来するものが大半であれば、物理処理や薬品処理でSSを取り除くことで処理が完了する可能性もあり、生物処理が不要の場合もあります

廃液がエマルジョン化している場合には、前述した減圧蒸留という方法が有効ですが、その他にも薬品処理で処理する方法もあります。ただし、エマルジョン化した排水の薬品処理は大量の薬品が必要になる場合が多いため、ランニングコストと手間を考えることが大切です。

最後に処理水の検証は外部の分析機関に依頼しましょう。目視では求める水質になっているかどうかの判断が難しいためです。

ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水を処理した事例

ノルマルヘキサン抽出物質を多く含んだ排水は、グリーストラップなどの物理処理と生物処理を組み合わせて処理することが多いですが、薬品処理に変更することで処理がうまくいく場合もあります。

下記記事の事例では、エマルジョン化した排水をグリーストラップと浄化槽で処理していましたが、滞留時間が短く油分の低減ができていませんでした。薬品処理に切り替えることによって、すばやく処理できた事例です。

参考記事:株式会社ネクストリー導入事例「食品洗浄排水 ノルマルヘキサン抽出物質の低減」

ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水処理はミズサポまでご相談ください

ノルマルヘキサン抽出物質を含む排水は物質処理や薬品処理で前処理を行った後に生物処理を行うことが一般的です。水質汚濁法で排水基準が設けられているため、確実に排水処理するようにしましょう

もしノルマルヘキサン抽出物質を含む排水の処理でお困りであれば、ミズサポまでお問い合わせください。最適な処理方法の提案から外部の分析機関の紹介まで幅広くサポートします。

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