「豚のエサを変えたら、畜産排水の汚泥が固まらなくなった…。」とお困りではありませんか?
畜産排水は家畜に与えるエサや、使用する設備の変更によって、既存の排水処理ではうまくいかなくなるケースが多くありますが、状況を分析して、高分子凝集剤(こうぶんしぎょうしゅうざい)を正しく選定することで安定した処理が可能です。
本記事では畜産排水の特徴や排水基準、処理方法まで網羅的に解説していますので、畜産排水の処理にお困りの方は必見です。
目的
畜産排水の特徴
牛や豚、鶏などのふん尿を含む畜産排水には、以下の特徴があります。
- 有機物、窒素やりんなどが多く含まれている
- アンモニアや亜硝酸などの有害物質が含まれている
それぞれを以下で掘り下げて確認していきましょう。
有機物、窒素やりんなどが多く含まれている
畜産業で出る家畜の糞尿を含む排水は、有機物の他に窒素やりんを多く含んでいます。
また有機物の濃度を表すBODの値は他の産業と比べて非常に高く、※10倍~30倍にも及ぶのが特徴です。排水処理しないままで河川などに放流すると、自然界の自浄作用が追いつかず、汚染の原因となります。
※参考:2013年1月静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センター「静岡県内における養豚排水の水質特性」
アンモニアや亜硝酸などの有害物質が含まれている
畜産排水にはアンモニアや亜硝酸といった水質汚濁防止法で有害物質に指定されている物質も含まれているのが特徴です。
アンモニアや亜硝酸は、乳幼児に※メトヘモグロビン血症を引き起こす恐れのある「硝酸性窒素等」に分類され、排水基準が厳しく設定されています。
※メトヘモグロビン血症:ヘモグロビンの機能不全で酸素不足になる状態のこと
畜産排水に関わる法令
畜産排水に関わる法令は、主に以下の2つです。
- 家畜排せつ物法
- 水質汚濁防止法
それぞれの法令の概要を確認していきます。
家畜排せつ物法
家畜排せつ物法とは、畜産業を行う事業者が「家畜排せつ物を処理するにあたって守るべき基準」を定めた法令です。管理基準が適用されるのは、以下の家畜を飼育する事業者となります。
- 牛:10頭以上
- 豚:100頭以上
- 鶏:2,000羽以上
- 馬:10頭以上
具体的には家畜の排せつ物を野積みや素掘りなど不適切な管理をしないことや、畜産排水が地下に浸透しないようにコンクリートなどの施設で管理することを定めた法令です。
水質汚濁防止法
水質汚濁防止法とは、河川や海域、地下水の水質汚濁を防止するための法令です。以下の特定施設を持つ畜産業の事業所は、水質汚濁防止法に基づいて、排水基準値を守る必要があります。
- 総面積50m2以上の豚房
- 総面積200m2以上の牛房
- 総面積500m2以上の馬房
水質汚濁防止法については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
参考:水質汚濁防止法の有害物質とは?一律排水基準や違反した場合の罰則を解説
畜産排水の排水基準
特定施設を持つ特定事業場では水質汚濁防止法が適用されます。1日あたりの排水量が50m3を超える場合、もしくは排水に排水基準以上の有害物質が含まれる場合は排水処理が必須です。
畜産排水には多量の有機物やアンモニア、亜硝酸といった物質が含まれることが多いため、排水処理は必須と考えておきましょう。畜産排水で注意すべき排水基準は以下の表のとおりです。
物質名 | 項目 | 一律排水基準 |
アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物 | 有害物質(健康項目) | 100mg/L |
生物化学的酸素要求量(BOD) | その他の項目(生活環境項目) | 160mg/L(日間平均120mg/L) |
浮遊物質量(SS) | その他の項目(生活環境項目) | 200mg/L(日間平均150mg/L) |
窒素含有量 | その他の項目(生活環境項目) | 120mg/L(日間平均60mg/L) |
りん含有量 | その他の項目(生活環境項目) | 16mg/L(日間平均8mg/L) |
大腸菌群数 | その他の項目(生活環境項目) | 日間平均3,000個/cm3 |
畜産排水の処理方法
排水基準を満たすために、畜産排水は以下の方法で処理します。
- 薬品処理
- 物理処理
- 生物処理
畜産排水は高分子凝集剤で固液分離させた後、脱水機で汚泥に含まれている水分を絞ります。(薬品処理と物理処理)
その後、固体は堆肥化して、液体は微生物を活用した生物処理を行います。微生物の働きによって、畜産排水中の有機物や窒素、りんなどを分解する排水処理方法です。生物処理を行い、排水基準を満たすことができれば、下水道や河川などに放流できる状態となります。
各種排水処理方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
参考:排水処理とは?3つの排水処理方法や具体例をわかりやすく解説
畜産排水に効果的な高分子凝集剤
畜産排水はいかに効率よく固液分離できるかが排水処理のポイントとなります。その中で重要な役割を担っているのが薬品処理で使用する高分子凝集剤です。
高分子凝集剤は畜産排水中の汚れ同士をくっつけて固体化させます。電荷的にプラスのもの、マイナスのもの、両性のものなど多くの種類がありますが、畜産排水では使用するエサや脱水機の仕様が変わることによって、既存の高分子凝集剤で十分な効果が得られなくなり、状況に応じて再選定する必要があるので、注意が必要です。
畜産排水は、家畜の頭数や使用するエサ、設備によって排水の特性が変化する特徴がありますので、高分子凝集剤の選定や使用量などの知見を持つ専門業者への問い合わせがおすすめです。
畜産排水にお困りの方はミズサポにご相談を
畜産排水には高濃度の有機物やアンモニアなどの有害物質が含まれており、排水処理が必須です。薬品処理、物理処理、生物処理という複数のステップにより、排水基準を満たせるように確実に排水処理していきましょう。
畜産排水の処理にお困りの方はミズサポまでご相談ください。お困りごとをヒアリングさせていただき、地域に応じて最適な高分子凝集剤や脱水機をご提案できる専門業者を紹介いたします。