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排水処理設備の導入を検討する前に、調べることは4つあることがおわかりいただけたと思います。まず確認しないといけないのが、自社が特定事業場に該当するかどうかです。
特定事業場とは水質汚濁防止法で定められている「特定施設」がある事業場のことです。この記事をお読みの方の中には「特定施設が何かわからない。」「特定施設と特定事業場の違いがわからない。」とお困りの方もいらっしゃるでしょう。
本記事では特定施設について簡単に説明し、特定事業場に課せられている義務についても解説しています。
自社が特定事業場に該当するかどうか気になる方は必見です。
目的
特定施設とは?
特定施設とは、汚水や廃液を出すために排水の水質規制が必要とされた設備のことです。
特定施設を持つ事業所は「特定事業場」として認定されます。この認定により、水質汚濁防止法が適用され、工場全体の排水量が1日あたり50m³を超える場合、排水規制の対象となります。
まずは、特定施設の特徴を確認していきましょう。
汚水や廃液を出す設備のこと
特定施設は人の健康を害したり、生活環境に被害を及ぼしたりする物質を汚水や廃液で出す設備のことを指します。
汚水や廃液を未処理のままで下水道や河川などに放流すると、下水道管を劣化させたり、下水処理の機能を低下させたりするだけでなく、近隣住民の健康被害を引き起こす可能性もあるので、排水処理が必要です。
74種類に分類される
2024年6月現在、水質汚濁防止法では特定施設は全部で74種類に分類されています。汚水や廃液を出す設備のほとんどは網羅されていると考えてよいでしょう。
例えば、金属製品メーカーなどで使用している湿式塗装ブースは以下の特定施設です。
例)63のホ:製造工程中に排出される不要ガス中の有害ガス、粉じん等を水等を使用して除去する施設
下記の参考サイトに特定施設の一覧がありますが、自社で導入する設備がどの特定施設に当てはまるのか判断するのはとても難しいので、地方自治体の窓口か水処理の専門業者に確認することをおすすめします。
参考:環境省「水質汚濁防止法第二条第二項の特定施設について」表3
特定事業場の義務
特定施設を持つ特定事業場には、以下が義務付けられています。
- 特定施設の設置や変更などの届出
- 排水基準の遵守
- 事故時の応急処置
- 水質の測定
それぞれの具体的な内容を以下で確認していきましょう。
1.特定施設の設置や変更などの届出
特定事業者は、特定施設において以下の対応をする場合、地方自治体に届出を提出する必要があります。
- 特定施設の設置
- 構造の変更
- 設備の変更
- 使用の方法の変更(場所、排水濃度、使用時間など)
- 特定施設の使用の廃止
いずれも設置や変更を行う30~90日前までに地方自治体への届出が必要です。地方自治体によって、届出時期が異なる場合もあるので注意しましょう。
2.排水基準の遵守
1日あたりの排水量が50m3を超える特定事業場には、排水基準の遵守が義務付けられています。万が一、排水基準を超過している場合は、懲役や罰金などの罰則が課せられる可能性もありますので、排水基準の遵守は必須です。
過失による排水基準の超過でも罰則の対象となるので、「知らなかったでは済まされない」と覚えておきましょう。
3.事故時の応急措置
特定事業場には、有害物質などが基準値以上排水される事故が発生した場合に、応急措置対応と事故内容の届出が義務付けられています。
もし応急措置を講じずにいると、地方自治体から特定事業場に対して応急措置の命令が下ることもあり、命令に違反した場合には6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が課せられる可能性もあるので、注意しましょう。
4.水質の測定
特定事業場には、排水の汚染状態を測定して、その結果を3年間保存しておくことが義務付けられています。
もし測定や記録をしていなかったり、虚偽の記録をしていたりすると、30万円の罰則が課せられるケースもあるので、忘れずに対応しましょう。
特定事業場に該当する場合は自社の排水について調べよう
特定事業場に該当して、排水量が50m3を超えるもしくは有害物質が排水に含まれる場合は、水質汚濁防止法が適用されて排水処理が必須となります。
次のステップは排水の量と有害物質が含まれるかどうかの確認です。以下の記事で詳しく説明していきます。
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