水質汚濁防止法の有害物質とは?排水基準や違反した場合の罰則を解説

水質汚濁防止法の有害物質とは?排水基準や違反した場合の罰則を解説

「新しい工程で有害物質が出るみたいだけど、水質汚濁防止法の対象かどうかわからない…。」とお困りではありませんか?

水質汚濁防止法では28種類の有害物質が定められており、国や地方自治体で排水基準が決められています。有害物質を出す設備を設置する際は、地方自治体への届出が義務であり、怠った場合は罰則もあるので、注意が必要です。

本記事では水質汚濁防止法で定められている有害物質について、わかりやすく解説していますので、概要を知りたい方は必見です。

水質汚濁防止法とは?

水質汚濁防止法とは1970年に制定された(※1)公共用水域や地下水の水質汚濁を防止するための法律です。工場や家庭で使用して汚くなった水を排出するためのルールであり、国民の健康と生活環境を守るために作られました

※1 公共用水域:川・湖・沼・海とこれらに接続している水路すべて

図:水質汚濁防止法の3つの基準

上の図のように、水質汚濁防止法には3つの基準があり、以下のように覚えておくとわかりやすいです。

  • 一律排水基準:国が定めている排水基準
  • 上乗せ排水基準:都道府県が条例で定める排水基準で、国よりも厳しい基準
  • 横出し基準:都道府県や市町村が独自で定める排水基準

ベースは国が定めた一律排水基準であり、都道府県や市町村が上乗せ基準や横出し基準を設けて、地域の水質を監視しています。

水質汚濁防止法で定められている有害物質

2024年5月現在、水質汚濁防止法では28種類の有害物質が指定されています。以下で有害物質の概要や一律排水基準、指定物質との違いを確認していきましょう。

人の健康を害する恐れがある物質

有害物質とは、その名のとおり「人の健康や生活環境に被害を与える恐れがある」物質のことで、健康被害の例として有名なのは、イタイイタイ病と水俣病です。

  • イタイイタイ病:鉱山排水に含まれていたカドミウムが原因と考えられている
  • 水俣病:工場排水に含まれていた水銀が原因とされている

他にも腹痛や神経のまひなど中毒症状を引き起こす、皮膚炎や腫瘍の原因となる六価クロム、発がん性のある砒素(ヒ素)などが有害物質に指定されています。

指定物質との違い

指定物質とは、公共用水域に多量に排出されると人の健康や生活環境を悪化させる恐れがある物質のことです。有害物質との違いは一律排水基準(国が定める排水基準)の有無と考えればわかりやすいでしょう。

物質数一律排水基準事故時の措置
有害物質28種類有り・応急措置を講じる
・事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届出
指定物質60種類無し・応急措置を講じる
・事故の状況と講じた措置の概要を都道府県知事に届出

有害物質への追加は、物質の有害性を科学的な知見を複数年に渡って蓄積して総合的に判断することになっています。直近では2012年に「塩化ビニルモノマー」、「1,4-ジオキサン」が追加されました。

指定物質では、2022年に「アニリン」、有機フッ素化合物「PFOS」「PFOA」、「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸」の4物質が追加されています。今後も健康被害の事例が確認された物質が指定される可能性もあり、有害物質の予備軍と覚えておくとわかりやすいでしょう。

有害物質の一覧と一律排水基準(28種)

2024年5月現在、水質汚濁防止法で定められている有害物質と一律排水基準は以下の表のとおりです。

No有害物質名一律排水基準(許容限度)
1カドミウム及びその化合物0.03mg Cd/L
2シアン化合物1 mg CN/L
3有機燐化合物(パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン及び EPNに限る)1mg/L
4鉛及びその化合物0.1 mg Pb/L
5六価クロム化合物0.2 mg Cr(VI)/L
6砒素及びその化合物0.1 mg As/L
7水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物0.005 mg Hg/L
8アルキル水銀化合物検出されないこと
9ポリ塩化ビフェニル0.003mg/L
10トリクロロエチレン0.1mg/L
11テトラクロロエチレン0.1mg/L
12ジクロロメタン0.2mg/L
13四塩化炭素0.02mg/L
141,2-ジクロロエタン0.04mg/L
151,1-ジクロロエチレン1mg/L
16シス-1,2-ジクロロエチレン0.4mg/L
171,1,1-トリクロロエタン3mg/L
181,1,2-トリクロロエタン0.06mg/L
191,3-ジクロロプロペン0.02mg/L
20チウラム0.06mg/L
21シマジン0.03mg/L
22チオベンカルブ0.2mg/L
23ベンゼン0.1mg/L
24セレン及びその化合物0.1 mg Se/L
25ほう素及びその化合物※10 mg B/L
26ふっ素及びその化合物※8 mg F/L
27アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物100mg/L
281,4-ジオキサン0.5mg/L

引用:環境省「水・土壌・地盤・海洋環境の保全」一般排水基準

※No25、26は海域以外の公共用水域への排水基準を記載

水質汚濁防止法に違反した場合の罰則

水質汚濁防止法では、対象となる事業者に2点の義務が課せられています。

  • 自治体への届出(特定施設の設置、変更、廃止、譲渡、氏名の変更など)
  • 排水の測定・記録・保存(1年1回以上の測定と記録の3年間保存)

仮に違反した場合には、以下の表のとおり罰則を受ける可能性があるので、注意が必要です。

違反の内容罰則
特定施設での命令違反1年以下の懲役または100万円以下の罰金
排水基準の超過、応急措置の命令違反6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
特定施設の設置・変更の未届出、虚偽の届出3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
虚偽報告、記録の未保存、立入の拒否など30万円以下の罰金
氏名等の変更、継承の届出違反など10万円以下の過料

参考:e-Gov「水質汚濁防止法」第6章

水質汚濁防止法に違反している場合、まずは自治体から改善命令が出る場合が多く、この命令に従わなければ、懲役や罰金が課せられます

例えば、特定施設において有害物質の排水処理方法を無断で変更して、変更後の排水から基準値以上の有害物質が出たとします。当然、自治体からは改善や廃止の命令が出され、これに従わないと警察に告発されて書類送検となる場合もあるでしょう。

万が一、自治体から改善命令を受けた場合は、速やかに水処理の専門企業に相談することが大切です。以下の記事では、排水の種類に応じて相談できる企業を数多く紹介していますので、ぜひご覧ください。

■水処理企業の特徴をわかりやすく紹介!自社に合った企業を見つけよう

水質汚濁防止法の違反事例

水質汚濁防止法の違反事例で近年注目されたのが、日本製鉄株式会社による有害物質シアンの流出事故です。この違反事例は千葉県のホームページでも公表されています。

参考:「日本製鉄株式会社によるシアン流出事案等に係る報告等に対する評価書」の公表及び指導文書の交付について

この違反事例のポイントを以下のとおりです。

  • 工場周辺の川や水路が赤くなり、魚が大量死していることから発覚
  • 自治体へ届出を行わず、無断で排水経路の変更やシアン処理装置を設置していた
  • 基準値を超えるシアンが検出されていても、「不検出」と虚偽の報告を行った

有害物質に関するずさんなリスク管理が指摘された事例で、2023年1月には千葉海上保安部が家宅捜索する事態にまで発展しています。

有害物質は確実に排水処理しよう

人の健康や生活環境を害する恐れがある有害物質は、確実に排水処理を行い、基準値以内に収める必要があります。万が一、有害物質を流出させてしまった場合は、速やかに最善の対策を行い、再発防止に努めることが大切です

有害物質を含む排水処理についてお困りの方は、株式会社ネクストリーまでお問い合わせください。お困りごとをヒアリングして、最適な排水処理方法をご提案します。

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