し渣(しさ)は下水処理場の処理で切っても切れない存在です。し渣の処理が効率的にできないと、様々なリスクが発生します。
本記事では、し渣を処理しない場合のリスクや一般的な処理方法についてわかりやすく解説しています。し渣処理について相談できる企業も紹介していますので、お困りの方は必見です。
目的
し渣とは?
し渣(しさ)とは汚水に混ざり込んでいる固形のゴミのことで、よく見られるのは以下のとおりです。
- 髪の毛
- 食べ残し
- 繊維類
- 紙
- ビニール
中にはコンクリートの破片やカルシウムを主成分とする白いかたまりがし渣として下水処理場に流れついた例もあります。
参考:茨城県流域下水道事務所「えっ!こんな物が】皆様にお願いです
し渣と混同しやすいのが沈砂(ちんさ)です。沈砂は下水処理場に流れ着いた水に含まれる砂利や砂のことで、沈砂地に沈んだものを指します。し渣は沈砂地で沈まずに、機械で回収されたものと覚えておくとわかりやすいでしょう。
し渣と沈砂はそれぞれ下水処理場の外に搬出されて、産業廃棄物として処理されます。
し渣が引き起こす問題
画像引用:PR TIMES セイスイ工業株式会社「脱水・水処理」に関する調査結果のプレスリリース
上のグラフは仮設水処理設備のレンタルを行うセイスイ工業株式会社が実施した、し渣を脱水した経験を持つ100人を対象としたアンケートの結果です。この結果からもわかるとおり、し渣が引き起こす問題には以下が挙げられます。
- 設備の故障
- 高額な産業廃棄物処理費用
それぞれについて掘り下げて確認していきます。
設備の故障
し渣を含んだ汚水処理を行う場合に付きまとうのが設備の故障です。
- 髪の毛や繊維などのし渣がポンプに詰まる
- し渣が撹拌機の羽根に引っ掛かり過負荷状態になる
- し渣の移送装置にし渣が絡まり部品が早期に壊れる
撹拌機やポンプなどの設備に、し渣が絡まることで故障の原因となります。故障を防ぐためには、し渣の除去を行うための清掃が必要です。
高額な産業廃棄物処理費用
近年は、産業廃棄物処理施設の不足や処理費用の値上げによって、産業廃棄物の処理コストが上昇傾向にあります。少しでも処理コストを削減するためには、脱水処理で含んだ水の量を少なくする必要がありますが、脱水に時間がかかる、悪臭が発生するなど別の問題が起こるのがネックです。
また、設備清掃の頻度を低くすることもコスト削減には有効な方法です。しかし、こまめに清掃を行わないと設備故障の原因となるため、し渣の除去はなるべく効率的に行う必要があります。
し渣の一般的な処理方法
し渣の一般的な処理方法は以下のとおりです。
- 自動除塵機で不要物を除去する
- し渣脱水機で脱水する
- 産業廃棄物として処理する
それぞれの工程を紐解いて確認していきます。
1.自動除塵機で不要物を除去する
自動除塵機はレーキと呼ばれるアタッチメントがコンベアに等間隔に並べられている設備です。レーキにより水に含まれるし渣を連続的にすくい上げて、上部のワイパーで回収します。次工程の前に大きなし渣を安定的に除去できるため、し渣処理には欠かせない存在です。
自動除塵機によるし渣の回収は、以下のYouTube動画を見るとイメージしやすいので、ぜひご覧ください。
■YouTube動画 都留市役所地域環境課「除塵の様子(令和4年3月22日)」
2.し渣脱水機で脱水する
画像引用:前澤工業株式会社「スクリュー式し渣洗浄脱水機 ウォッシャープレス」
し渣は多量の水分を含んでいるため、し渣脱水機と呼ばれる設備で脱水することにより、処理コストの削減が可能です。
し渣脱水機はスクリューコンベアが採用されているものが多く、し渣を圧縮しながら搬送して脱水した後、上部のシュートから排出します。
産業廃棄物の処理コストを削減したい方は、し渣脱水機の導入が必須だといえるでしょう。
3.産業廃棄物として処分する
脱水したし渣は焼却炉があれば焼却処分できますが、焼却炉がなければ産業廃棄物として処分されます。
上記のとおり、まずは自動除塵機によってし渣を回収して、し渣脱水機で効率的に脱水することにより、産業廃棄物の処理コストを安くすることが可能です。
し渣の処理の相談ができる企業
し渣の処理にお困りであれば、専用設備を製造する以下のメーカーに相談することがおすすめです。
- 住友重機械エンバイロメント株式会社
- 前澤工業株式会社
- 株式会社日立プラントサービス
- 株式会社SRM技術開発
それぞれの企業について特色を確認していきましょう。
住友重機械エンバイロメント株式会社
住友重機械エンバイロメント株式会社は、関西国際空港の水処理を支えていることでも有名な企業です。民間企業向けの水処理設備の他に、自治体・官公庁向けに下水道設備などを提供しています。
住友重機械エンバイロメントが製造する「スパイラルカッター」は、し渣の捕捉・破砕・搬送・脱水・排出を1台で行うコンパクトな設備です。し渣の発生量を抑えることで、袋詰めでの搬出ができるため、大がかりな設備が必要ない場合に最適だといえます。
省スペース化を実現した機器を多数取り扱っているメーカーですので、装置の設置スペースに限りがある場合は相談してみましょう。
参考:住友重機械エンバイロメント株式会社 破砕・脱水機構付垂直スクリュー式除塵機「スパイラルカッター」
前澤工業株式会社
埼玉県川口市に本社を持つ前澤工業株式会社は、国や地方公共団体の上下水道施設向けの設備に力を入れている企業です。海外への輸出実績も多数あり、グローバル展開を行う水処理企業だといえます。
前澤工業が製造するスクリュー式し渣洗浄脱水機「ウォッシャープレス」は、し渣の洗浄と脱水を1台で行うコンパクトな処理設備です。除塵機からし渣を直接投入できるため、省スペースに役立ちます。
前澤工業はバタフライ弁や制御弁の専門メーカーですので、配管に使用するバルブにお困りの方は相談してみましょう。
参考:前澤工業株式会社 スクリュー式し渣洗浄脱水機「ウォッシャープレス」
株式会社日立プラントサービス
株式会社日立プラントサービスは、産業プラント設備の空調や電気工事・建築などのエンジニアリングをトータルで手がける企業で、上水・下水道施設向けに水処理設備を提供しています。
日立プラントサービスが製造するスクリーンユニット「しさとりクン」は、安定した通水性能で汚水中のし渣を捕捉して、破砕・洗浄処理を行う設備です。し渣を捕捉するスクリーンは、スクリューに取り付けたブラシによって効率よく清掃されるため、目詰まりしにくくなっています。
日立製作所グループの総合力で、上水・下水道施設のメンテナンスや維持管理まで対応できる企業ですので、設備以外の相談がある場合にはおすすめです。
株式会社SRM技術開発
兵庫県伊丹市に本社がある株式会社SRM技術開発は、主に工場排水処理で使われる「スクリーン」という機械を製造するメーカーです。主力製品のMS(マイクロセパレート)スクリーンを使えば、細かい汚泥と水を分けることができます。
下水処理におけるし渣処理のメーカーではありませんが、工場排水の処理で、し渣を回収する装置をお探しの方にはおすすめのメーカーです。
参考:株式会社SRM技術開発
設備の活用でし渣を効率よく処理しよう
下水処理場には髪の毛や食べ残しなどのし渣が多く流れ着きます。
し渣を効率よく処理できる環境を整えることで、設備の故障を防げる、産業廃棄物処理費用を圧縮できるなど、様々なメリットを得ることが可能です。
本記事で紹介した企業では、し渣処理の専用設備を製造していますので、困りごとや改善したいことがある場合は、一度相談してみましょう。