「シアンは猛毒と聞くので、自社の排水処理方法が間違っていないか」このような疑問をお持ちではないでしょうか?
シアンとは、シアン化物の総称であり、最も有名な毒物の「青酸カリ」もシアン化物の一種になります。強い毒性をもっているため、慎重な処理を検討する必要があります。
本記事では、シアンを含む排水の処理方法についてわかりやすく解説しています。適切な処理方法を知りたい方は必見です。
目的
シアンとは?
シアンは、炭素と窒素が三重結合した「シアノ基(–CN)」を含む化学物質の総称です。
金属のめっき処理や化学工業の原料として広く利用されています。
シアンの主な性質は以下の通りです。
- 無色で水に溶けやすい
- 特有のアーモンド臭がある
- 非常に強い毒性を持つ
シアンの毒性は、体内の呼吸酵素の働きを阻害し、細胞のエネルギー不足を引き起こすことで、脳や心臓など重要な臓器が機能不全に陥る等の深刻な影響を与えます。
そのため、シアンの取り扱いは細心の注意を払う必要があり、排水処理においても処理が難しい物質の一つになります。
シアンの排水基準
極めて毒性が高いため、シアン化合物(全シアン)の排水基準は排水1リットルあたり1mg以下と厳しく定められています。
参考:環境省「一般排水基準」
この基準は、シアンが河川や土壌に排出されることを防ぎ、水生生物や生態系、さらには私たちの飲料水への影響を防ぐことを目的としています。
企業によっては、定められた一律排水基準より厳しく管理している場合も多くあります。
シアンを含む排水の処理方法
毒性の強いシアンを含む排水は、以下の方法で処理することが一般的です。
- シアンの無害化
- 有害金属の分離と除去
それぞれの処理について順番に解説します。
1.シアンの無害化
シアン化物の最大の特徴は毒性が強いことであり、まずは無害化する必要があります。
無害化で広く採用されているのが、アルカリ塩素法による薬品処理です。
アルカリ塩素法は、分解しやすいというシアン化物の特徴を利用しています。次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を添加することで、シアンのシアノ基が持つ強固な三重結合を破壊して、毒性の低いシアン酸や最終的に毒性のない窒素ガスや炭酸ガスへと変換させる方法です。
シアン化物を無害化する薬品処理は、アルカリ塩素法の他にオゾン酸化法や電解酸化法などもあります。
2.有害金属の分離と除去
シアン化物は金属と結合する性質があり、実際の現場では、シアンが含まれる排水には銅や亜鉛といった有害な重金属も一緒に含まれるケースが多くあります。
薬品処理によってシアン化物が分解された後も、銅や亜鉛などの重金属イオンが排水中に残存する場合があるため、続いて凝集処理による重金属の分離と除去が必要です。
凝集剤を排水に添加することで、重金属イオンを水に溶けにくい形に変化させて、水から分離させます。その後、沈殿するのを待って取り除けば処理完了です。
凝集処理については、ミズサポの以下記事で詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。
参考:排水の凝集処理とは?処理の流れや事例をわかりやすく解説
シアンを含む排水の処理はpH調整が重要
シアンを含む排水の処理は以下の順番で行われるのが一般的です。
- pH調整:排水をpH10~11のアルカリ性に調整する
- アルカリ塩素法による薬品処理:次亜塩素酸ナトリウムを添加する
- 一次酸化反応:排水を撹拌しながらシアン酸に酸化されるのを待つ
- 二次酸化反応:中和剤でpH7~8の中性に戻して窒素ガスと炭酸ガスに分解する
- 凝集沈殿処理:亜鉛や銅などの有害物質を凝集処理で沈澱させる
シアンを含む排水の処理において、最初のそして最も重要なステップがpH調整です。単に水質を安定させるだけでなく、処理の安全性と効率性を左右する極めてデリケートな工程となります。
シアンは酸性の条件下では、非常に毒性の高い青酸ガスを発生させるのが特徴です。そのため、処理を開始する前に排水をpH10〜11程度のアルカリ性に調整することで、危険なガス発生を抑制し、作業員の安全を確保します。
その後の酸化分解処理では、薬剤が最も効果的に作用するpH範囲があります。適切なpHに調整することで、シアンを窒素ガスや炭酸ガスといった無害な物質へ効率的に分解することが可能です。
シアンの排水処理でお困りならミズサポまでご相談ください
シアン化物はめっきなどの工業分野で数多く使用されていますが、毒性が強く、間違った処理を行うと作業者の命に係わる重大な事故につながる可能性もある危険な化学物質です。
もしシアンを含む排水処理にお困りであればミズサポまでご相談ください。お客様の状況をヒアリングして、最適な処理方法をご紹介します。