「排水処理でPACを使っているけど、最適な薬品なの?」と疑問に思われている方もいらっしゃるでしょう。
PACは最も多くの排水処理現場で使用されている無機凝集剤です。
本記事ではPACの特性や役割、メリット・デメリットについてわかりやすく解説しています。PACについて知りたい方は必見です。
PACとは?
PACは「ポリ塩化アルミニウム」の略称で、水処理に用いられる無機凝集剤であり、pH4の酸性を示す液体の薬品です。以下の理由から、上下水道施設や工場の排水処理などで幅広く使用されています。
- 凝集力が高く、少ない薬品量で効果を発揮する
- 凝集フロックの沈降速度が速い
- 汚泥の発生量が少ない
- 液体で溶解しやすい
- コストパフォーマンスが高い
PACは浄水場で飲料水を作る際にも使用されており、日本で最も有名で凝集剤だと言えるでしょう。
排水処理におけるPACの役割
排水処理においては、PACは凝結反応を起こす一次凝集で使用されます。凝結反応とは、汚れた水中にある粒子同士をくっつけてある程度の大きさの基礎フロックにすることです。この作用によって、水の濁りがキレイになります。
またPACは臭気の低減にも効果的です。排水の臭気は水中にある有機物や硫黄化合物が原因ですが、PACを使用するとこれらを凝集・沈澱できるため、臭気の低減に役立ちます。
排水の凝集処理については、以下の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
参考:排水の凝集処理とは?処理の流れや事例をわかりやすく解説
PACの使用方法
PACは、容器に入れて直接日光が当たらない冷暗所で保管します。酸性の液体で金属を腐食する恐れがあるため、耐酸性の容器に入れて保管しましょう。
排水処理でPACを使用する時は、原則として希釈せずに原液のまま使用します。投入量は原水の性質や濃度によって異なるので、事前に確認テストが必要です。PACの入れすぎは、逆に凝集不良を引き起こす可能性もあるので、注意しましょう。
処理したい原水にPACを投入した後は、ムラなく水中に分散させるために撹拌機などでしっかりと撹拌します。その後、基礎フロックを成長させるために、撹拌速度を落とすのがポイントです。投入時と同じ速度で撹拌すると、フロックが崩れてしまう可能性があります。
PACはpH4を示す酸性の薬品で、使用すると徐々に原水が酸性になるので、苛性ソーダや消石灰などアルカリ性の薬品による中和処理が必要です。
PACのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・pH4と他の酸性薬品よりも高くて使いやすく、設備が腐食しにくい・添加量が少なくて済む・汚泥が少なくて済む・環境への影響が低く、安全性が高い | ・酸性の薬品で中和処理が必要・熱に弱く、固まりやすい(注入時の不具合につながる)・凝集不良時に投入量の調整が複雑になる |
上記の表はPACのメリットとデメリットをまとめたものです。表からもわかるとおり、排水処理においてPACを使うメリットは多く、優秀な凝集剤だといえます。
PACは一次凝集で基礎フロックを作るための無機凝集剤のため、基本的には中和剤や高分子凝集剤など複数の薬品を併用します。そのため、凝集不良が起こった際にそれぞれの薬品の投入量を変更する必要があり、調整が複雑になるのがデメリットです。
PACを使わない排水処理
PACは多くの排水処理で使用される凝集剤ですが、以下の排水の場合はPACを使わずに処理されるケースもあります。
- 排水量が少ない場合
- 排水に有機物が多い場合
排水量が1日あたり10m3以下の小規模排水の場合、複数薬品を使わずに一剤粉末型凝集剤で排水処理が可能です。PACなどの無機凝集剤と高分子凝集剤の役割を1つの薬品で行えるリンスインシャンプーのような薬品であり、投入量の調整が容易になります。
またPACは主に無機排水の処理に適しており、有機排水の処理では効果を発揮できません。排水に有機物が多く含まれている場合は、生物処理が適しています。生物処理とは排水中の有機物を微生物に食べてもらうことによって、水をキレイにする方法です。
生物処理については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
参考:排水処理における生物処理とは?4つの方法や具体的な事例を解説
凝集処理でお困りであればミズサポまでご連絡ください
PACは多くの排水処理で効果を発揮する優秀な凝集剤です。他の無機凝集剤と比較しても使いやすく、コストパフォーマンスも高いため、排水処理の現場で重宝されている一方で、他の薬品と組み合わせて使用する必要があるため、凝集不良時の調整が難しいというデメリットもあります。
もしPACを使った凝集処理でお困りのことがあればミズサポまでお問い合わせください。お客様の現状をヒアリングさせていただき、最適な処理方法についてご提案いたします。